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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第05章.腕環

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26.心の力

 「あの……黒江さんに失礼なこと言っちゃって、すみませんでした」

 「いいよ。もう機嫌直ってるし。僕もまさかあんなに怒るなんて思ってなかったし」


 「ホントすみませんでした。使い魔って……怒るって言うか、感情があるんですね」

 「ん? うん。使い魔には色々種類があるけど、基本的に生き物だからね。魔物でも動物でも魔法生物でも、心と自分の意思は持ってるんだよ」


 術者に絶対服従の使い魔でも、心と自分の意思を持っている……


 「ゴーレムにも感情や表情を与えることは可能だけど、お(すす)めはできないなぁ……」

 「できるのにダメって……何故ですか、先生?」


 「感情は心のエネルギーで、表情はその表出。表情を出すのも抑えるのも、とっても大きなエネルギーが必要なんだ」

 「……はい?」


 「普通の人はそれを無意識に行ってるから気付かない。でも、お仕事とかで怒ってるのに怒ってないフリをして、ストレスで体調を崩す人って多いよね? そう言う人たちは心的エネルギーの(ひず)みが原因で病気になってるんだよ」

 「は……はい」


 姉ちゃんが時々、セクハラしてくるおっさん客ムカつく! って愚痴ってる。

 その場でキレたら、お店に迷惑が掛かるから、テキトーにスルーして、家に帰ってから俺に言う。


 ニュースでも、ストレスで病気になったりして労災認定……って言うのをしょっちゅう見かける。つまり、そう言うことなんだろう。


 「借り物だって言ってたし、家電と同じくらいの気持ちで使うといいよ」

 「何で? 魔物でもおっちゃんとクロみたいに仲良うできるん(ちゃ)うん?」

 巴が方言で先生に聞いた。俺も気になる。


 できるのにダメって……?


 「ゴーレムに感情を作らせて表現させるには、大量のエネルギーが必要だからね。友田君は魔力がなくて体力で使うから、過労で倒れちゃうよ」

 「えッ?」


 「腕環から出してあの形を維持するだけでも体力を消費するし、何か用事をさせればその分、友田君が疲れるんだよ。電子レンジに表情とか要らないよね? 余分な機能は使わないで、用のない時は、腕環も外した方がいいだろうね」


 要するに、デーレヴォに掃除とかさせても、結局、俺が疲れるのは変わりないのか。俺が二人欲しいくらい忙しくて、急いでる時限定?


 「詳しい機能については本人に聞いてみてね」


 機能……ホントに電子レンジやパソコンみたいな言われ様だ。


 だが、ここは八百万(やおよろず)の神々が住まう日之本帝国で、俺はパソコンに「こんくらいの変換、一発で出せよ! アホの子か!」とか言っちゃう奴なのだ。

 千年以上昔の和歌でさえも、擬人化てんこ盛り。日之本民族のDNAが、完全に人間の……美少女の姿で、会話も可能なマジックアイテムを道具扱いなんて、できる訳がない。


 過労上等! デーレヴォと笑顔で、楽しく大掃除だってしてやるぜ!


 普通なら、幼馴染になる筈だった須磨春花(すまはるか)とは接触禁止、塩屋(しおや)さんのチョコは、全力で断った。

 オカンのせいで、男の友達も赤穂(あこう)唯一人。


 人間の友達がダメなら、人外と仲良くするくらい、いいじゃないか。


 期間限定でもいい。いや、オカンに見つかって、大変なことになる前に返してあげたい。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
【関連が強い話】
野茨の血族」 巴君のその後。
虚ろな器」 高校生になった友田君が登場。
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