26.心の力
「あの……黒江さんに失礼なこと言っちゃって、すみませんでした」
「いいよ。もう機嫌直ってるし。僕もまさかあんなに怒るなんて思ってなかったし」
「ホントすみませんでした。使い魔って……怒るって言うか、感情があるんですね」
「ん? うん。使い魔には色々種類があるけど、基本的に生き物だからね。魔物でも動物でも魔法生物でも、心と自分の意思は持ってるんだよ」
術者に絶対服従の使い魔でも、心と自分の意思を持っている……
「ゴーレムにも感情や表情を与えることは可能だけど、お勧めはできないなぁ……」
「できるのにダメって……何故ですか、先生?」
「感情は心のエネルギーで、表情はその表出。表情を出すのも抑えるのも、とっても大きなエネルギーが必要なんだ」
「……はい?」
「普通の人はそれを無意識に行ってるから気付かない。でも、お仕事とかで怒ってるのに怒ってないフリをして、ストレスで体調を崩す人って多いよね? そう言う人たちは心的エネルギーの歪みが原因で病気になってるんだよ」
「は……はい」
姉ちゃんが時々、セクハラしてくるおっさん客ムカつく! って愚痴ってる。
その場でキレたら、お店に迷惑が掛かるから、テキトーにスルーして、家に帰ってから俺に言う。
ニュースでも、ストレスで病気になったりして労災認定……って言うのをしょっちゅう見かける。つまり、そう言うことなんだろう。
「借り物だって言ってたし、家電と同じくらいの気持ちで使うといいよ」
「何で? 魔物でもおっちゃんとクロみたいに仲良うできるん違うん?」
巴が方言で先生に聞いた。俺も気になる。
できるのにダメって……?
「ゴーレムに感情を作らせて表現させるには、大量のエネルギーが必要だからね。友田君は魔力がなくて体力で使うから、過労で倒れちゃうよ」
「えッ?」
「腕環から出してあの形を維持するだけでも体力を消費するし、何か用事をさせればその分、友田君が疲れるんだよ。電子レンジに表情とか要らないよね? 余分な機能は使わないで、用のない時は、腕環も外した方がいいだろうね」
要するに、デーレヴォに掃除とかさせても、結局、俺が疲れるのは変わりないのか。俺が二人欲しいくらい忙しくて、急いでる時限定?
「詳しい機能については本人に聞いてみてね」
機能……ホントに電子レンジやパソコンみたいな言われ様だ。
だが、ここは八百万の神々が住まう日之本帝国で、俺はパソコンに「こんくらいの変換、一発で出せよ! アホの子か!」とか言っちゃう奴なのだ。
千年以上昔の和歌でさえも、擬人化てんこ盛り。日之本民族のDNAが、完全に人間の……美少女の姿で、会話も可能なマジックアイテムを道具扱いなんて、できる訳がない。
過労上等! デーレヴォと笑顔で、楽しく大掃除だってしてやるぜ!
普通なら、幼馴染になる筈だった須磨春花とは接触禁止、塩屋さんのチョコは、全力で断った。
オカンのせいで、男の友達も赤穂唯一人。
人間の友達がダメなら、人外と仲良くするくらい、いいじゃないか。
期間限定でもいい。いや、オカンに見つかって、大変なことになる前に返してあげたい。




