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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第05章.腕環

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24/95

24.それは

 「じゃあ、友田君の持ってるそれが何かも知ってる?」

 「え……それ? ……あ、これ? 魔法の腕環って聞きましたけど……」

 俺はパーカーのポケットから、腕環を取り出した。


 (ともえ)もカップを置いて、腕環に注目する。

 先生と巴、どちらをメインに見せるか決めかねて、俺は腕環を(てのひら)に乗せて固まった。


 「悪い物ではないね。使い方は知ってる?」

 それは「品質の良し悪し」なのか「邪悪な物ではない」という意味なのか。


 俺は、ちょっとビビりながら、左手首に腕環をつけた。

 腕環に(はま)っていた赤い石が淡く輝き、白っぽい(もや)が立ち昇る。ゆっくりと渦を巻きながら丸テーブルの横に凝集(ぎょうしゅう)し、人のような形を()す。


 次の瞬間、赤い石が閃光を放った。

 「うわーッ!」

 俺と巴が同時に叫んで目を()らす。


 光が消えた後、丸テーブルの横には、銀髪の少女が(たたず)んでいた。

 全裸で。


 これか! これが家の中でしか使えない理由なのかッ?


 「友田君、腕環見せてくれる?」

 先生は、平然と俺に話し掛けてきた。魔法戦士の美女もノーリアクション。

 黒江さんは……ドアの近く、少女の向こうに立っているので、断じて、そっちを見る訳にはいかない。


 巴は、耳まで真っ赤にして(うつむ)いている。

 俺も多分そうだろう。


 「な……な……な……何なんですか、これッ?」

 「ゴーレムの一種だね。おつかい頼んだり、家の用事手伝ってもらったりするの。正確なことはちゃんと調査しないとわからないけど、使用者の魔力や体力が動力源だと思うよ」

 腕環の説明をする先生は、何だか嬉しそうだった。


 って言うか、どうして先生は、俺が魔法の腕環を持ってるって、わかったんだ?


 「先生の使い魔……みたいなもんですか?」

 「失礼な! 私をこんな、誰にでも使われる節操なしと一緒にしないで下さい!」

 黒江さんの怒声に、背中を殴られたような衝撃を受け、(すく)み上がる。


 「クロ、おいで。だっこしよう」

 先生が言った途端、ポンッと紙袋が割れたような音がした。

 黒猫が俺の足許をすり抜けてベッドに飛び乗り、先生の腕の中に納まる。


 帝大のサイトでは、「触るなキケン」と書かれたQRコード付きの白いゼッケンを着けていたが、今、目の前に居る黒猫は、何も着ていない。


 これ……黒江さんのにゃんこ形態だよな?

 変身する瞬間、生で見たかったなぁ……


 黒猫に変身した黒江さんは、琥珀色の目で俺を(にら)んで、フンッと鼻を鳴らした。


 「あーハイハイ、クロが一番上等で忠実なのは、僕が知ってるからね~」

 先生が、小さい子をあやすように優しく言って、使い魔の背中を()でる。

 黒猫は目を細めて、ゴロゴロ喉を鳴らし始めた。この姿だけを見ると、まるっきり猫にしか見えない。


 「なぁ、友田君、それ何なん?」

 また方言に戻った巴が、窓の方を向いたまま、少女の方を親指で指した。


 「すまん、俺もさっき占い師さんから借りたばっかで詳しいこと、知らないんだ」

 魔法戦士が溜息を()いて、腕環から出てきた少女に歩み寄る。


 先生は、にゃんこ形態の使い魔を撫でながら、説明を続けた。

 「使い魔は魔法の主従契約が必要だけど、この手のゴーレムは家電製品みたいな物だから誰でも使えるんだよ。宝石が二種類嵌ってるから、赤いのがルビーで体力、青いのはサファイアで魔力の充電池みたいな物だと思う」


 家電って……


 俺は左手の腕環を見た。赤い宝石が淡い光を放っている。

 電源オン? 充電中?

 こんな事なら、一般ブースで古着を買っておけばよかった。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
【関連が強い話】
野茨の血族」 巴君のその後。
虚ろな器」 高校生になった友田君が登場。
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