19.昼ご飯
「お待たせ。すぐに用意するから」
眼鏡の叔父さんが台所に入ってきた。
巴が黒江さんの言葉を伝える。叔父さんは、テキパキと慣れた手つきで、ご飯の用意を始めた。
巴が冷蔵庫から出したお茶を注いでくれた。
かすれる声でお礼を言って、一気飲みする。
何とか、巴先生に会わせてもらえないだろうか。
でも、どう頼めばいいんだ?
ご飯、味噌汁、手造りハンバーグ、サラダ。
巴家の昼食は、意外に庶民的だった。
でも、美味かった。
姉ちゃんが作ってくれる弁当も美味い。
どうして、誰かが作ってくれた「家のご飯」って、こんなに美味いんだろう。
俺達は食事をしながら、学校の話をした。と言っても、主に叔父さんが話を振って、俺が答えるだけだ。
巴は一言二言返すだけで、全く会話が盛り上がらない。
商都の奴ってもっとこう……漫才みたいに面白い奴ばっかりだと思ってた。
こんな暗いのも居るんだな。
もしかすると、それで、前の学校でいじめられてたのか。
叔父さんによると、叔父さんたち兄弟は、俺らと同じ中学の卒業生で、明石先生が巴の父ちゃんの担任だったそうだ。
何度も転勤して、また第一中学に来て、巴の担任になるって、偶然なんてレベルじゃない。これが運命って奴なのか?
部活の話、教科担任の去年の様子、同級生の珍回答、体育の授業で見たミラクル、校外学習や文化祭、体育祭……
部活に入っていなくても、剣道部が全国大会まで行ったとか、合唱部が何かの賞を取ったとか、そういう話はできる。
ぼっちでも、クラス内で起こった面白い出来事は、その場に居れば知っている。
なるべく面白いエピソードを語ってみたが、巴の反応は、相変わらず薄かった。
前の学校では陸上部だったことくらいしか喋らない。余程イヤな所だったのか。
食事が終わって、叔父さんが片付けを始める。いつもの調子で手伝おうとしたら「座ってていいよ」と断られた。
そっか。普通、客はそんなことしないんだ。
席に戻ったものの、話のネタも尽きつつあり、気マズくなってきた。
まぁこんなんじゃ、友達になれっこないから、それはそれで安心だ。
オカンがこの家に突撃して、何か壊したら、弁償できる気がしない。最悪、家も内臓も全部売り飛ばしたって、無理だろう。




