表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第03章.フリマ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/95

14.守る力

 爺さんは、ポケットからメモ帳とボールペンを取り出した。

 「名前を書いてくれたら、レンタル契約成立だ」

 「えっ? 名前だけ? 住所と電話番号は、いらないんですか?」


 それと、未成年だと保護者の氏名とか、身分証明書とか、他にも色々……


 「いらないよ。君は必ず、返しに来てくれるから」

 爺さんの目は、俺の背後を見ていた。

 他の客が来たのかと思って、右にずれながら振り向く。


 誰も居ない。


 みんな、この占い師のブースを素通りして行く。

 「その腕環は、必ず、君の助けになってくれるよ」

 「助けに……なって、くれる? それってもしかして……」


 再び動悸が激しくなる。


 「魔法の腕環だよ。レンタルなら、用が済んだ時に自力で(わし)(もと)に帰ってくる。君が返しに来てくれれば、半額返金するけどね」


 いやもう、どんな表情すればいいのか、わからない。

 マジックアイテムを千円でレンタル? 何その契約。

 嬉し過ぎて、ちびりそうなんですけど。

 あ……でも、千円もするのか。

 姉ちゃんのプレゼント、二百円じゃ、ロクな物、買えなくなるな。


 自分でも、一瞬で表情が固くなったのが、わかった。

 「すみません。今、千二百円しか持ってなくって、あの……」

 「お姉さんの誕生日プレゼントとしても、大いに役に立つけどね」

 俺は、言葉が出てこなかった。


 まだ、何も、言ってないよな?

 何で、姉ちゃんが居るとか、誕生日プレゼントを買いに来たとか、わかるんだ?

 占い師って、カードや水晶球がなくても、そんなハッキリ、わかるもんなの?


 こんな凄い占い師が(すす)めるんだ。

 きっと、本当に俺たちを「何か」から守ってくれる……


 俺は、メモ帳とボールペンを受け取り、名前を書いた。


 友田鯉澄


 爺さんは、メモ帳を受け取った途端(とたん)(けわ)しい顔になった。

 「あ、あの、それ、本名なんです。できれば、普通のに変えたくって、その……」

 ふざけて偽名を書いたと思われて当然だ。

 「失礼だけど、君の名前はいい名前じゃないねぇ。大凶と言う程、酷くはないけど……」


 ……そっちかよ!


 「普通……普通の名前で、なるべく幸せそうな……」

 占い師の爺さんは、ブツブツ言いながら、名刺の裏に何か書いて、俺に手渡した。


 俺の手の中に同じ名刺が二枚。

 二枚目の裏には「幸助」と書いてあった。


 「もし、名前を変えるなら、この名前が大吉だ」

 「あ……ありがとうございます!」

 この爺さん、初対面の俺の名付け親になってくれるのか。


 頑張って名前変えよう。

 「友田幸助」として、生き直したい。人生を大吉でやり直したい。


 「お姉さんは店に来た時に有料でね」

 俺は、何度もお礼を言いながら、千円札を渡した。爺さんは、ちゃっかり宣伝しながら、腕環を俺の掌に乗せた。


 ひんやりとした銀の腕環。


 「使う時は、それを身に着けて命令するだけでいい。でも、外で使っちゃいけないよ。必ず家の中で使うんだ」

 「はい! 家の中ですね。わかりました。ありがとうございます」

 俺は何度もお礼を言って、占い師のブースを離れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
【関連が強い話】
野茨の血族」 巴君のその後。
虚ろな器」 高校生になった友田君が登場。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ