表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/88

貴方の翼が堕ちても 結

 憎しみ、なんて根深いものじゃなかった。

 つまらなかっただけ。

 何か面白いものになりたかっただけ。

“自分”を変えられるなら、きっと、なんでも良かったんだ。


 望んで。

 望んで。

 周りで人が消える。

 騒ぎが起こる。

“誰”がやったかなんて知らない。

 ただ楽しかった。

 それが“俺”が求めて得た変化だったから。


 人が消え。

 物が壊れ。

 友人が狂っていく。

 それも楽しかった。

“普通”じゃないのが最高だった。


 衛をヤッてやろうと思ったのも暇潰し。

 松本の妙に冷めたところが気に食わなくて、からかってやるつもりだった。

 そしたら衛の方が気に食わなくなった。

 冷めた眼。

 バカにした眼。

 気に入らなくて、何度も、何度も、松本の知らないところでも滅茶苦茶にしてやったら衛は死んだ。

 化け物と一つになって“俺”はそれも吸収して今までより面白い力を手に入れた。

 柴田も仲間にした。

 楽しかった。

 人間でいるより、全然。


 人を襲った。

 妖は逃げたがった。

“俺”は放さなかった。

 だって、それが楽しかったから。



 ***



「…」

 流焔は目を閉じる。

 心の奥、里族により一つにされた人間の魂を見る。

「………何を泣く」

 泣いている声がする。

 これは何だ。

 激怒、憎悪、悔恨、…哀惜…?

 自分を汚し死に追いやった者の死に涙するのか?

 自分を売った者を許したかと思えば、そんな奴の為にも悲しむと?

「人間の感情は判らない…」

 呟く妖を「衛」と呼ぶ声。

 現れたのは人の母親。

「衛、これ直しておいたから持っていきなさいね」

「…」

 母親は言い、ボタンを付け直したシャツを置いていく。

 流焔はそれを手に取り、心の奥底へ問いかける。

「……ありがとう、と言えばいいのか」

 問い掛けに、心が震えた。

 …笑った?

「…いまのは笑うところなのか?」

 また、笑う。

 人間の感情などまったく判らないと妖は思う。

 だが、気分は悪くなかった。





               END


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ