↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冬の城に住まう冷酷侯爵様に溺愛されておりますが、殺される前に逃げたいと思います  作者: minori


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/28

23.ロマンチックなディナー


「リリー……リリー……」


 そっと体を揺さぶられる。

 ゆっくりと目を開けると、エドワードが居た。


「あ、寝ちゃってた……」


「ぐっすりだったね、ほら。外が綺麗だよ」


 エドワードに手を引かれるまま、バルコニーの方まで歩いていく。

 そこには大きくて真っ赤な夕陽が今にも海の中へ落ちていきそうだった。


「綺麗……」


 オレンジ色に染まった海と空が美しく、その光景に目を奪われる。

 こんなに大きな夕焼けを見た事がなかった。太陽なんてどこで見ても大きさなんて同じなはずなのに、なぜこんなにも大きく見えるんだろう。


「リリーの方が綺麗だよ」


 そして、この男はなんでこの雰囲気を台無しにするような歯の浮く台詞を吐いているのだろう。

 私が軽くあしらうと、エドワードは嬉しそうに笑った。

 寝た事もあってか、なんだかこの笑顔を見ていると、先ほどまで機嫌の悪かった自分が馬鹿みたいに思えてくる。


 エドワードは跪き、仰々しく私の手を取り、ディナーに誘った。

 海辺で小さく何か準備をされているのが見える。私は差し出されたエドワードの手にそっと手をのせ、彼の誘いを受ける事にした。


 砂浜での食事は見事なものだった。

 白い砂浜の上に赤いバラの花びらが散りばめられいる。

 天蓋付きの美しいテーブルの上に美しく並べられていくお料理。

 沈んでいく夕陽を楽しんだ後は満点の星空の下、色とりどりのキャンドルに点々と火が灯されて、辺りを照らす。私たちは美しく楽しいひと時を過ごした。


「リリーが喜ぶかと思ってね、ここに来たかったんだ」


 最後のデザートを食べながら、エドワードはふっとそんな事を漏らす。


「私の為?」


「うん。気に入らなかった?」


 休養とか、招待状をもらったとか色々な話を重ねて言っていたけど、私の為に用意されたものだったのだろうか。

 不貞腐れて寝てしまうなんて、勿体ない事をしてしまったな。

 

 それに、白ワインを飲みながら、涼しい顔をしてはいるけど、私の態度で傷つけていたかもしれない。

 自分の為に用意してもらったと聞いた瞬間、なんだか申し訳ない気持ちになってきた。


「ごめんね、私今日態度悪かったよね……」


 小さく消え入りそうな声になってしまったが、エドワードに謝罪する。

 エドワードはふっと少し困ったように微笑む。


「ううん、俺も大人げなかったから」


 眉を下げてほほ笑むエドワード。

 エドワードが大人げない態度を今日取ったっけ。

 きょとんとしていると、急に女性の声がした。


「あの……」


 申し訳なさそうな顔をして、昼間に会った美女が近づいてきた。

 またエドワードに何かあるのだろうか。

 

 せっかく楽しいディナーをしていたのに、と思っていると昼間の美女はまっすぐ私の方にやって来た。


「本日は誤解をさせてしまったようで申し訳ございません。リリー様」


 女性は私に深く頭を下げた。

 まさか自分の方に来るとは思わずに驚いていると、女性はぴっと両手で小さな一枚の名刺を差し出す。

 

「私、ロマンス小説作家ローレンスの担当編集者のイザベラと申します。今日は、今話題のリリー様とウエスティン卿の恋愛についてのお話を伺いたく、ウエスティン卿にお話しをしたのです」


 私は女性から名刺を受け取る。

 そこにはロマンス小説の出版社の名前も併記されていた。


 ローレンス先生といえば、セバスチャンに勧められて読んでいる私が今激ハマり中の作家さんだ。

 私は名刺を見た後にパッと顔を上げる。 


「え! ローレンス先生の!? じゃあ、もしかしてローレンス先生も……」


 きょろきょろと見回すと、すぐに昼間に会った若い紳士がやってくる。

 まさか昼間に会ったあの紳士がローレンス先生。

 こんなに優しくて穏やかな顔をした無害そうな男性が、あんな複雑な恋愛模様を書いているだなんて。


 ローレンスも私とエドワードに申し訳なさそうな顔をして、深々と頭を下げた。


「すみません、今ちょっとスランプ気味で。お二人を見てぜひお話を伺わなければ、と必死になってしまい……今思えば、とても失礼な事をしてしまったと気が付きました。大変申し訳ございませんでした」


 改めてイザベラも深々と頭を下げる。

 二人に頭を下げられて、私は慌てふためいてしまった。


「そんな、頭を上げてください。誤解だという事はよくわかりましたので」


 なんだ、エドワードに色目を使いにきた女性かと思ったのに全然違ったのか。

 私にそう言われると、二人はほっとしたように顔を上げた。


 その後はローレンスが本にサインを書いてくださったものをプレゼントしてくださったり、私たちは軽く話をした。

 今私とエドワードの身分差の恋が社交界で話題となっているらしく、今度のローレンスが描くロマンス小説は身分差をテーマとしたものとするらしい。

 とはいえ、催眠術で恋に落ちたというか落とした私が詳しく話せるエピソードもなく、エドワードの言うように一目惚れだとふんわりと濁してしか話ができなかったが。


 憧れの作家と敏腕美人編集者と恋人(一時的)との楽しい夜はあっという間に時間が過ぎていった。



読んで頂きましてありがとうございました。

良ければリアクションやブクマ、評価、感想をいただけるととっても嬉しいです!励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。