↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者が魔王(俺)に挑んだが、死んだので俺が勇者になる  作者: 蒼月蓮
第五章 勇者になれなかった魔王
PR
91/100

第91話 魔王の役目

 三国自由貿易条約の改定から数日後。


 魔王城は、いつもの日常へ戻っていた。


「…………」


 アレンは執務室で書類を眺めている。


「終わった……」


「まだでございます」


 ノエルが次の束を置いた。


「…………」


「魔王様?」


「三国の話し合い終わったよね?」


「終わりました」


「反乱も終わった」


「はい」


「聖剣同盟の問題も終わった」


「左様でございます」


「じゃあ、なんで仕事減らないの?」


「国が存在する限り、政務はなくなりません」


「魔王って大変……」


 アレンは机へ突っ伏した。


 ◇◇◇


 その日の午後。


 アレンはガルドとともに城下町へ出ていた。


 今日は変装していない。


 白い髪。


 異形の翼。


 特徴的な脚。


 魔王アレンそのままの姿だった。


「魔王様!」


 街の人々が頭を下げる。


「こんにちは」


 アレンは手を振った。


 以前なら、人間だった自分が魔族の国を歩いていることに違和感があった。


 だが今は。


 ここが自分の国だった。


 ◇◇◇


「ガルド」


「なんだ」


「先代って、こうやって城下町を歩いたりしてた?」


「ああ」


「意外」


「護衛を撒いて勝手に市場へ行くこともあった」


「……僕と似てない?」


「だから前から言っている」


「…………」


 少し歩くと、大庭園が見えてきた。


 今日も一般開放されている。


 子供たちが走り。


 老人がベンチに座り。


 様々な種族が同じ場所を歩いている。


「……使ってくれてる」


 アレンは嬉しそうに呟いた。


「作ったのだから当然だろう」


「でも嬉しいんだよ」


 ◇◇◇


 二人は大噴水の前で足を止めた。


「ねえ、ガルド」


「なんだ」


「僕がいなくなっても、この庭って残る?」


「管理され続ければな」


「そっか」


 アレンは噴水を見上げる。


「先代の気持ち、ちょっと分かったかも」


「父上の?」


「うん」


 自分が生きている間だけじゃない。


 自分が死んだあとにも。


 誰かが使ってくれるものを残したい。


「魔王ってさ」


 アレンは静かに言った。


「一番強い奴がなるものだと思ってた」


「…………」


「でも違うんだね」


 ガルドは何も言わず、続きを待った。


「自分がいなくなったあとも、みんなが困らないようにするのが……魔王なのかな」


 ガルドは僅かに目を細めた。


「父上も、似たようなことを言っていた」


「また先代!?」


「仕方ないだろう。似ているのだから」


「僕、喧嘩は強いよ?」


「そこだけは正反対だ」


 アレンは笑った。


 ◇◇◇


 帰り道。


 大庭園の入口で、一人の小さな魔族の子供がアレンへ駆け寄ってきた。


「魔王様!」


「ん?」


「これ!」


 差し出されたのは、一輪の花。


「庭で見つけた!」


「僕に?」


「うん!」


 アレンは受け取る。


「ありがとう」


 子供は嬉しそうに走っていった。


「…………」


 アレンは手の中の花を見る。


 勇者になりたかった。


 兄との約束も果たしたかった。


 けれど。


 今、自分には――。


 魔王として守りたいものがある。


「帰ろう、ガルド」


「ああ」


 アレンは再び歩き出した。


 勇者ではなく。


 魔王として。


 自分が選んだ道を、最後まで歩くために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。