第84話 庭園に集う者たちたち
大庭園の建設が始まってから、数か月。
魔王城の眼下に広がっていた何もない土地は、すっかり姿を変えていた。
巨大な運河が掘られ、大理石の道が延び、中央には大噴水の土台が完成している。
「おお……」
視察に来たアレンは、思わず声を漏らした。
「もう庭っぽくなってる!」
「まだ半分ほどですが」
ノエルが答える。
「十分すごいよ」
◇◇◇
「レンー!」
遠くから声が聞こえた。
「ガッシュ?」
振り返ると、ガッシュを先頭に四十種族の子供たちがやって来る。
その後ろには、いつもの梟族の少年。
「陛下。お招きいただき、ありがとうございます」
「今日はそんな堅くなくていいって」
「そういうわけには――」
「こいつ八年間ずっとこんな感じだから諦めろ」
「ガッシュ!」
アレンは笑った。
「今日はみんなにも庭を見てもらおうと思って」
「俺らにも?」
「四十種族の庭を作るんだから、本人たちに聞いた方がいいでしょ?」
◇◇◇
そこからは、一気に騒がしくなった。
「水場を増やしてほしい!」
「木がたくさんある方がいい」
「日陰も必要です」
「夜でも使える場所が欲しい!」
四十種族。
当然、好みも違う。
アレンは次々と意見を聞いていった。
「全部できる?」
建築官を見る。
「……調整いたします」
「お願いします!」
その横でノエルが小さく呟く。
「予算が増えそうですね」
「聞こえない」
「魔王様?」
「聞こえない!」
◇◇◇
「なあ、レン」
ガッシュが建設中の巨大運河を眺めながら言った。
「ここ、泳いでいい?」
「いいんじゃない?」
「陛下」
梟族の少年が即座に割って入った。
「運河は遊泳場ではございません」
「じゃあ泳げる池作ろうぜ!」
「プールがございます!」
「外で泳ぎたいんだよ!」
アレンが少し考える。
「じゃあ、作ろうか」
「やった!」
「陛下!?」
◇◇◇
夕方。
四十種族の子供たちが帰ったあと。
アレンは建設途中の庭園に立っていた。
遠くには魔王城。
その周囲には、先代が築いた巨大な城下町が広がっている。
「……先代は一人で考えたのかな」
「どうでしょう」
ノエルが隣に立つ。
「でも僕は、みんなと作る方がいいな」
四十種族。
使用人。
職人。
城下町の人々。
いろんな者が使う場所だからこそ、いろんな意見があっていい。
「完成が楽しみだね」
「はい」
「あとはお風呂だな」
「結局そこですか」
「大事でしょ!」
ノエルは小さく笑った。
先代が築いた国に。
アレンと新しい世代が作る場所が、少しずつ形になっていく。
完成の日は――もう遠くなかった。




