第81話 大庭園計画
翌日。
魔王城の会議室には、ノエルをはじめ、財務官や建築官たちが集められていた。
その中央でアレンは、一枚の巨大な地図を広げる。
「ここに作りたい」
指差したのは、魔王城と城下町に隣接する広大な土地だった。
「……かなりの面積になりますな」
「土地は余ってるんでしょ?」
「はい。それは間違いございませんが……」
建築官は地図を見つめる。
「どのような庭園を?」
「まず、大きな噴水」
「はい」
「長い運河も欲しい」
「はい」
「森も残して、散歩できる道を作って……」
アレンは次々と希望を口にする。
「あと四十種族それぞれの庭!」
「四十もですか!?」
「せっかくだから」
建築官たちが慌ただしく書き留めていく。
◇◇◇
「魔王様」
財務官が尋ねた。
「こちらは魔王家専用庭園となさるのでしょうか?」
「いや」
アレンは首を横に振る。
「普段はみんなに開放する」
「一般開放を?」
「うん」
城下町の住民が散歩したり。
子供たちが遊んだり。
四十種族が交流したり。
そんな場所にしたかった。
「ただし」
アレンは一本指を立てる。
「僕たちが使いたい日は閉鎖ね」
「と、申しますと?」
「使用人のみんなとか、ガルドたちと遊んだりしたいし」
「なるほど」
「外国のお偉いさんが来たら、そこで話してもいいよね」
ノエルが頷く。
「外交の場としても利用できますね」
「でしょ?」
単なる庭ではない。
国民の憩いの場。
宴会。
外交。
四十種族の交流。
様々な用途に使える場所にする。
「せっかく土地があるんだから」
アレンは笑った。
「使わなきゃ損だよ」
◇◇◇
「それで」
ノエルが書類を見る。
「浴場についてですが」
「大きくしたい!」
「やはり……」
「なんでため息つくの!?」
アレンは地図の一角を指差した。
「庭を見ながら入れる露天風呂がいいな」
「規模は?」
「大浴場くらい?」
「…………」
「でも、僕専用じゃないよ?」
普段は一般市民にも開放。
四十種族が利用できる巨大な公共浴場。
必要な日だけ貸し切る。
「それなら無駄じゃないでしょ?」
「確かに利用価値は高いかと」
「よし!」
アレンが嬉しそうに頷く。
しかし――。
「では、概算費用を算出いたします」
「…………」
アレンの笑顔が消えた。
「魔王様?」
「……いくらになる?」
「まだ分かりません」
「精金貨五百枚くらい?」
「先代魔王陛下の浴場と比較しないでください」
「じゃあ千枚?」
「ですから、まだ算出しておりません」
ノエルが呆れたように息を吐く。
「魔王様」
「何?」
「昨日、貨幣について勉強すると仰いましたね?」
「…………」
「仰いましたね?」
「はい……」
◇◇◇
会議終了後。
アレンは再び窓から広大な土地を眺めた。
何もない雪原。
だが、いつかここに。
巨大な庭園ができる。
人々が歩き。
子供たちが遊び。
笑い声が聞こえる。
「……楽しみだな」
先代が国を作ったように。
自分にも。
何か一つくらい――。
未来に残せるものを作りたかった。




