第77話 四十種族の招待
翌朝。
魔王城の執務室。
「ノエル」
「はい、魔王様」
「四十族館のみんなを僕の部屋に呼びたい」
ノエルの手が止まった。
「……皆様を、でございますか?」
「うん。ガッシュが連れてきたいって」
「なるほど」
ノエルは少し考えたあと、頷いた。
「承知いたしました。ただし、私的区画への立ち入りとなりますので、護衛にはお伝えしておきます」
「お願い」
「それと――」
「何?」
「ガッシュ様が昨日、四十族館を無断で抜け出していた件については?」
「…………」
アレンは目を逸らした。
「僕からは何も聞いてない」
「魔王様?」
◇◇◇
その日の午後。
四十族館。
巨大な講堂には、各種族の子供たちが集められていた。
リザードマン。
吸血鬼。
梟族。
猫族。
犬族。
その他、北方に暮らす様々な種族。
その前で職員が一枚の書状を開いた。
「魔王アレン陛下より、皆様へ招待状が届いております」
「……魔王陛下から?」
ざわめきが起こる。
「明日、魔王城の私的区画へ皆様をご招待するとのことです」
「私的区画!?」
今度は大騒ぎになった。
魔王城へ入った経験ならある。
しかし、魔王本人の私的区画など別だ。
「静粛に」
梟族の少年が声を上げる。
成績首席。
いつも通り冷静――。
……に見えたが。
「本当に……私的区画と?」
「はい」
「…………」
僅かに羽毛が逆立っていた。
その後ろでガッシュが笑う。
「そんな緊張することねえって」
「ガッシュ」
「ん?」
「なぜ貴方は平然としているのです?」
「昨日行ったから」
「…………はい?」
「レンの部屋」
沈黙。
「……レン?」
「ああ、アレン」
「魔王陛下をそのように呼ぶなと何度言えば――!」
◇◇◇
翌日。
魔王城最上階。
黄金色の大扉の前に、四十種族の子供たちが並んでいた。
全員、正装。
「緊張する……」
「粗相だけはするなよ」
「ガッシュ。貴方もです」
「俺?」
「貴方以外に誰がいるのです」
やがて――。
巨大な扉が開いた。
「みんな、いらっしゃい!」
アレンが笑顔で出迎える。
四十種族の子供たちは、一斉に頭を下げた。
「魔王陛下に拝謁――」
「あ、それ今日はなし」
「……はい?」
「遊びに来たんだから」
アレンは少し困ったように笑う。
「僕もみんなと同じくらいの歳だよ?」
「ですが、陛下は陛下です」
梟族の少年が答える。
「じゃあ今日はアレンって呼んでよ」
「…………」
「ね?」
「…………努力いたします」
「努力が必要なの?」
横でガッシュが吹き出した。
「だから言ったろ。こいつら真面目なんだって」
「ガッシュは少し見習ってください」
「嫌だね」
アレンは二人を見て笑った。
「じゃあ、まず何する?」
「俺は風呂!」
「ガッシュ!」
「いいじゃん。みんなに見せたいんだよ」
「じゃあ行こう!」
「魔王陛下まで!?」
首席の梟族の少年は頭を抱えた。
四十種族の子供たちが魔王城に来て、まだ五分。
彼は早くも悟り始めていた。
――魔王アレン陛下とガッシュ。
この二人を一緒にしてはいけない、と。




