第7話 最後の一人
生き残り競争が始まって三日。
施設の広場は、もはや戦場だった。
地面には折れた木剣。
赤黒く染まった石畳。
子どもたちは疲労と空腹で、立っているだけでも精一杯だった。
アレンも例外ではない。
腕には無数の傷。
額から流れる血を袖で拭う。
それでも、剣だけは離さなかった。
「あと六人か。」
白衣の男が帳簿を見ながら呟く。
最初は五十人近くいた子どもたち。
生き残ったのは、わずか六人。
「終わらせろ。」
その一言で、最後の戦いが始まった。
一人の少年がアレンへ飛びかかる。
「お前を倒せば……!」
アレンは一歩だけ身を引く。
木剣を弾き、相手の腹へ蹴りを入れた。
少年は地面を転がる。
「もうやめよう……。」
アレンは息を切らしながら言った。
「これ以上戦っても、誰も救われない。」
しかし少年は涙を流しながら叫ぶ。
「嫌だ!」
「死にたくないんだ!」
再び飛び込んでくる。
アレンは目を閉じた。
(……ごめん。)
鈍い音が響く。
少年は動かなくなった。
アレンはしばらく立ち尽くした。
胸の奥が締め付けられる。
それでも戦いは終わらない。
残る五人。
四人。
三人。
二人。
誰もが生き残るため必死だった。
そして――。
最後に立っていたのは、一人だけ。
アレンだった。
広場は静まり返る。
白衣の男たちは拍手を始めた。
「素晴らしい。」
「歴代最高の実験体だ。」
「まさか七歳で最後まで生き残るとは。」
施設長がゆっくりとアレンの前へ歩いてくる。
「今日からお前は、我々の最高傑作だ。」
アレンは何も答えない。
ただ、静かに施設長を見つめていた。
その瞳には、もう恐怖はない。
あるのは、一つだけ。
(ここから出る。)
(絶対に生きて、この地獄を終わらせる。)
その決意は、誰にも折ることはできなかった。




