第6話 生存競争
アレンが施設へ連れて来られてから、六年の月日が流れた。
七歳になったアレンは、痩せ細ってはいたが、その瞳だけは死んでいなかった。
毎日続く人体実験。
毎日続く剣の素振り。
そして、この日。
施設中に警鐘が鳴り響いた。
カン、カン、カン――。
白衣の男たちが慌ただしく動き回る。
「全実験体を広場へ集めろ!」
「いよいよ始めるぞ!」
子どもたちは何が起きるのか分からず、不安そうな表情で広場へ集められた。
そこには数十人の子どもたちがいた。
皆、アレンと同じように痩せ細り、怯えた目をしている。
施設長らしき男が壇上へ上がる。
「諸君。」
「今日から最終実験を開始する。」
その言葉に、広場は静まり返る。
「内容は単純だ。」
「最後の一人になるまで、生き残れ。」
一瞬、誰も理解できなかった。
しかし次の言葉で、全員が青ざめる。
「武器は自由。」
「殺しても構わん。」
「最後まで生き残った者だけが、次の段階へ進める。」
絶望だった。
子どもたちは互いの顔を見つめる。
昨日まで一緒に泣いていた仲間。
今日からは敵。
誰かが木剣を握った。
そして――。
「うわあああ!」
一人が叫びながら飛び出した。
それを合図に、広場は戦場へ変わる。
泣き声。
叫び声。
木剣がぶつかる音。
アレンはその場から動かなかった。
(戦うしか……ない。)
目の前へ木剣を振り上げた少年が飛び込んでくる。
「ごめん!」
アレンは反射的に身をかわし、木剣で相手の手を弾く。
少年は木剣を落とし、その場へ倒れ込んだ。
アレンは息を荒げる。
(違う……。)
(こんなの、戦いじゃない。)
(殺し合いだ。)
しかし、ためらえば自分が死ぬ。
その現実だけは理解していた。
広場の上から白衣の男たちが笑う。
「素晴らしい。」
「これこそ我々が求めていた実験だ。」
アレンはその笑い声を聞きながら、奥歯を噛み締めた。
(……絶対に。)
(絶対に生き残る。)
(そして、いつか。)
(この施設を壊してやる。)
その小さな決意は、七歳の少年の胸に深く刻まれた。




