第27話 勇者ビースト
ガギィィィン!!
聖剣と龍皇剣が再び激突する。
衝撃波が荒野を駆け抜け、大地を抉る。
勇者ビーストは後方へ飛び退き、静かに息を整えた。
「やはり強いな。」
アレンも龍皇剣を構え直す。
「君も。」
「人間にしては、かなり強い。」
二人の間には、不思議な空気が流れていた。
憎しみではない。
互いの実力を認め合う、剣士同士の敬意だった。
戦士は肩を押さえながら立ち上がる。
「勇者様!」
「奴は化け物です!」
ビーストは視線を逸らさない。
「分かっている。」
「だが、退くわけにはいかない。」
僧侶が回復魔法をかける。
傷がゆっくりと塞がっていく。
「勇者様、ご無理は……。」
ビーストは小さく笑った。
「心配するな。」
「俺たちは四人で勇者パーティーなんだ。」
その言葉に、三人も笑みを浮かべる。
「もちろんです!」
「最後まで戦います!」
その様子を見たアレンは、どこか羨ましそうだった。
(仲間……か。)
施設では誰も信じられなかった。
魔王城では家族のような仲間ができた。
目の前の勇者たちも、お互いを信じ合っている。
少しだけ胸が温かくなった。
ビーストは聖剣を肩へ担ぐ。
「魔王アレン。」
「一つ聞いてもいいか?」
「なに?」
「お前は……本当に人間を滅ぼしたいのか?」
アレンは少しだけ考えた。
「いや。」
「僕は戦争が嫌いなんだ。」
「だから、人間を攻めたことは一度もない。」
その答えに、勇者一行は驚く。
「そんな……。」
「魔王なのに?」
アレンは静かに頷いた。
「守りたいものがあるだけ。」
「君たちと同じだよ。」
ビーストは目を細める。
「……そうか。」
その一言だけ返した。
しかし。
勇者として、ここで剣を引くことはできない。
王国を守る使命がある。
仲間を守る使命がある。
アレンも同じだった。
魔族たちを守る責任がある。
だから。
二人は再び剣を構えた。
「これ以上、話しても答えは出ないね。」
「ああ。」
「なら。」
ビーストが聖剣を握る。
「決着をつけよう。」
アレンは小さく笑った。
「望むところだ。」
二人の姿が同時に消える。
次の瞬間。
荒野の中央で、再び剣戟の音が響き渡った。
決着の時は、すぐそこまで迫っていた。




