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第25話 勇者と魔王

第25話 勇者と魔王


 北方魔族領。


 魔王城から数キロ離れた荒野。


 乾いた大地には草木一本生えておらず、冷たい風だけが吹き抜けていた。


 そこへ、一人の少年がゆっくりと歩いてくる。


 白髪。


 蒼い瞳。


 漆黒のローブ。


 腰には龍皇剣。


 人間から見れば、まだ幼い子供だった。


 その姿を見た勇者一行は足を止める。


「……子供?」


 戦士が眉をひそめる。


「魔王城の近くで何をしている?」


 僧侶も困惑した表情を浮かべる。


「避難が間に合わなかったのでしょうか……。」


 しかし、勇者ビーストだけは違った。


 彼は目の前の少年から、尋常ではない魔力を感じ取っていた。


 聖剣を静かに構える。


「みんな、気を付けろ。」


「この子……いや。」


「この方が、魔王だ。」


 三人の仲間が息を呑む。


「なっ!?」


「こんな子供が?」


 アレンは静かに立ち止まり、小さく息を吐いた。


「初めまして。」


「僕が北方魔族領領主。」


「魔王アレン。」


 その声は穏やかだった。


 怒りも憎しみも感じられない。


 勇者ビーストは一歩前へ出る。


「俺は勇者ビースト。」


「人々を守るため、お前を討ちに来た。」


 アレンは小さく頷く。


「そう。」


「それが君の使命なんだね。」


 数秒の沈黙。


 乾いた風だけが二人の間を吹き抜ける。


 アレンは龍皇剣へ手を添えた。


「一つだけ聞いてもいい?」


 ビーストは頷く。


「何だ。」


「君は。」


「魔族は全員、悪だと思ってる?」


 その問いに、ビーストは迷わず答えた。


「……分からない。」


「だが、魔王である以上、多くの人間が恐れている。」


「だから俺は、お前を倒す。」


 アレンは目を閉じ、小さく笑う。


「そっか。」


「なら。」


 ゆっくりと龍皇剣を抜く。


 漆黒の刀身が陽の光を受け、不気味に輝いた。


「君を倒さないと。」


「僕の国も守れない。」


 ビーストも聖剣を抜く。


 黄金の光が荒野を照らした。


 魔王。


 勇者。


 二人が同時に構える。


 戦士は巨大な斧を握り締める。


 魔法使いは魔力を練り始める。


 僧侶は静かに祈りを捧げた。


 そして――


 アレンが静かに笑う。


「本物の魔王ってやつを。」


「見せてあげる。」


 その瞬間。


 大地を震わせるほどの瘴気が、アレンの身体から噴き出した。


 勇者一行の表情から笑みが消える。


 全員が悟った。


 目の前の少年は――


 今まで戦ってきたどんな魔物よりも、圧倒的に強い。

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