第24話 勇者一行
人間領との国境。
乾いた荒野を四人の人影が歩いていた。
先頭を歩くのは、一人の青年。
腰には聖剣。
純白のマントを羽織り、堂々とした歩みを見せる。
勇者――ビースト。
その後ろには、幼い頃から共に旅をしてきた仲間たちが続く。
屈強な戦士。
天才魔法使い。
心優しい僧侶。
誰もが大陸屈指の実力者だった。
「いよいよだな。」
戦士が笑う。
「ああ。」
ビーストは前を見据えた。
「魔王を倒せば、この戦争も終わる。」
僧侶が静かに祈りを捧げる。
「皆さん、ご無事で帰りましょう。」
魔法使いも笑みを浮かべた。
「私たち四人なら負けないよ。」
その言葉に、全員が頷く。
彼らはまだ知らない。
これから向かう相手が、人間の想像を遥かに超える存在だということを。
◇◇◇
一方、魔王城。
玉座の間では、アレンが静かに立っていた。
漆黒のローブ。
黄金の王冠。
右手には魔王の杖。
腰には龍皇剣。
その姿には、十五歳になった今でも幼さが残っていた。
ノエルが心配そうに口を開く。
「魔王様。」
「本当にお一人で向かわれるのですか。」
アレンは小さく頷く。
「うん。」
「これは魔王である僕の役目だから。」
ガルドが拳を握る。
「せめて我々だけでも。」
「駄目。」
アレンは即座に首を振った。
「もし僕が負けたら。」
「その時は……好きにしていい。」
ガルドは何も言えなかった。
レイグも静かに目を閉じる。
誰もが理解していた。
アレンは、この戦いを誰にも譲るつもりがない。
◇◇◇
玉座の間を出る前。
アレンはふと立ち止まった。
「ノエル。」
「はい。」
「帰ってきたら。」
「シチュー食べたい。」
ノエルは思わず笑ってしまう。
「もちろんです。」
「腕によりをかけて、お作りいたします。」
アレンは満足そうに頷いた。
「約束だからね。」
そう言い残し、静かに歩き出す。
巨大な扉が開く。
冷たい風が吹き抜けた。
黒いローブが揺れる。
その後ろ姿を、魔族たちは黙って見送っていた。
「ご武運を……。」
誰かが小さく呟く。
その言葉は、やがて城中へ広がっていった。
史上最悪の魔王。
そして、誰よりも優しい王。
アレンは一人、勇者との決戦へ向かう。
その先に待つ運命を、まだ誰も知らなかった。




