第18話 魔王会議
コンコン。
朝食を終えたアレンの部屋に、ゴブリン執事がやって来た。
「魔王様、お時間です。」
「……もう?」
「はい。本日は各部族長との初めての会議でございます。」
アレンは大きくため息をついた。
「会議って苦手なんだよね……。」
ノエルは優しく笑う。
「大丈夫ですよ。私もご一緒いたします。」
「うん。」
◇◇◇
玉座の間。
長い赤い絨毯の先には巨大な玉座。
その左右には、ガルドとレイグが立っている。
ノエルは玉座のすぐ横。
部屋には各部族の代表が集まっていた。
オーガ族。
リザードマン族。
ゴブリン族。
吸血鬼族。
悪魔族。
鬼族。
皆、一斉に頭を下げる。
「魔王様。」
アレンは少し緊張しながら玉座へ座る。
だが――
(高い……。)
(なんか落ち着かない。)
小さな身体では玉座が大きすぎる。
足も床に届かない。
ぷらぷらと揺れてしまう。
魔族たちは必死に見ないふりをしていた。
ガルドだけは口元を押さえている。
(かわいいな……。)
レイグは真面目な顔を崩さない。
(笑ったら殺される。)
会議が始まった。
ゴブリン族長が前へ出る。
「北の砦ですが、老朽化が進んでおります。」
「修繕が必要かと。」
アレンは頷く。
「分かった。」
「直そう。」
次はリザードマン族。
「武器庫の槍が不足しております。」
「補充をお願いしたく。」
「うん。」
「作ってあげて。」
ノエルが横で素早く書き留めていく。
その調子で会議は進んでいった。
しかし一時間後――
アレンの瞼が少しずつ重くなる。
(眠い……。)
昨日は緊張であまり眠れなかった。
話が耳に入らない。
コクリ。
コクリ。
ガルドが小声で言う。
「魔王様……。」
返事はない。
次の瞬間。
アレンはゆっくりとノエルの肩へ寄りかかった。
「……すぅ。」
寝息が聞こえる。
玉座の間は静まり返った。
魔族たちは目を丸くする。
「ね……寝た?」
ノエルは苦笑しながら、起こさないようそっと頭を支える。
「昨日はお疲れだったのです。」
「少しだけ、このままで。」
ガルドは腕を組みながら笑う。
「仕方ない。」
「魔王様はまだ七歳だからな。」
レイグも珍しく微笑んだ。
「起きたら続きをやればいい。」
その言葉に、部族長たちも頷く。
「魔王様も、お疲れなのですね。」
誰一人、不満を口にする者はいなかった。
昨日まで恐れていた少年は、今では魔族たちにとって守りたくなる存在でもあった。
こうして、魔王アレンの初めての会議は――
居眠りという、誰も予想しなかった形で幕を閉じた。




