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第16話 魔王覚醒

 三日後。


 魔王城・大演武場。


 数万体の魔族が観客席を埋め尽くしていた。


 誰もが、この戦いを見届けるために集まっていた。


「本当に一人で戦うらしい。」


「相手は反対勢力の幹部五人だ。」


「いくら何でも無理だ。」


 広場の中央には、小さなアレンが立っていた。


 その隣にはノエル。


「魔王様……本当に、お一人で?」


 アレンは静かに頷く。


「うん。」


「これは僕がやる。」


 ノエルは心配そうに俯く。


 しかし古龍が静かに言った。


「信じよ。」


「この子は、余が選んだ魔王だ。」


 大扉が開く。


 ドォォン!!


 反対勢力の幹部五人が姿を現した。


 悪魔族。


 吸血鬼。


 魔獣族。


 鬼族。


 堕天族。


 全員が長年魔王軍を支えてきた実力者だった。


 悪魔族の男が剣を抜く。


「最後に聞こう。」


「まだ降伏する気はないか?」


 アレンは首を横に振る。


「ない。」


「じゃあ始めよう。」


 開始の鐘が鳴った。


 ゴォォォン――。


 五人が同時に地面を蹴る。


 闘技場が揺れるほどの勢いだった。


「死ねぇぇぇ!!」


 巨大な斧。


 鋭い爪。


 炎の魔法。


 風の刃。


 四方八方から攻撃が迫る。


 誰もが思った。


(終わった。)


 その瞬間――


 アレンの身体から、黒紫色の瘴気が噴き出した。


 ゴォォォォ……


 演武場全体を覆うほどの濃密な魔力。


 空気が震えた。


 観客席の魔族たちが思わず息を呑む。


「な……!」


「この魔力は……!」


 古龍だけが静かに目を閉じる。


「ようやく目覚めたか。」


 アレンはゆっくりと目を開く。


 蒼い瞳が黄金色へと変わる。


 そして静かに一歩踏み出した。


 ドンッ!!


 次の瞬間。


 五人の幹部が同時に吹き飛んだ。


「ぐはっ!」


「速い……!」


 誰一人、動きが見えなかった。


 アレンは剣を振ることすらしていない。


 ただ、圧倒的な魔力だけで相手を押し潰したのだ。


 演武場は静まり返る。


 アレンは五人を見渡し、静かに言う。


「まだ続ける?」


 その一言に、五人は震えた。


 これは子供ではない。


 人間でもない。


 まさに――


 魔王。


 悪魔族の男は剣を捨て、その場で片膝をつく。


「……参りました。」


「我らの敗北です。」


 それを合図に、他の四人も膝をついた。


 やがて演武場にいた数万の魔族たちが、一斉に頭を垂れる。


「魔王様……!」


「魔王様、お許しください!」


 アレンは静かに剣を納めた。


「もう終わり。」


「これからは、皆でこの国を守ろう。」


 その言葉に、ノエルは涙を浮かべる。


「魔王様……。」


 古龍は穏やかに微笑んだ。


「今日より、お前は真の魔王だ。」


 こうして七歳の少年は、すべての魔族に認められた。


 後に歴史は、この日をこう記す。


『史上最悪にして、史上最年少の魔王アレン誕生の日』

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