第14話 始めての決闘
三日後。
魔王城・闘技場。
数千体もの魔族が、円形闘技場を埋め尽くしていた。
「始まるぞ。」
「あの人間の子供だ。」
「一撃で終わる。」
「古龍様も何を考えているんだ。」
誰一人として、アレンが勝つとは思っていない。
七歳の人間。
相手は歴戦のオーガ。
勝負になるはずがなかった。
闘技場の大扉が開く。
ギィィ……
アレンがゆっくりと姿を現した。
漆黒の服。
腰には木剣ではなく、一振りの剣。
ノエルが前日に用意してくれた訓練用の剣だった。
緊張している。
それでも足は止めない。
その後ろ姿を、ノエルは心配そうに見つめていた。
「魔王様……。」
古龍は静かに言う。
「信じるのだ。」
「余が見込んだ子だ。」
反対側の扉も開く。
巨大なオーガが現れた。
身長は三メートルを超え、筋骨隆々。
巨大な戦斧を軽々と肩へ担いでいる。
魔族たちは歓声を上げた。
「オーガ将軍だ!」
「終わりだ!」
オーガはアレンを見下ろし、鼻で笑う。
「逃げるなら今だ。」
「貴様のような子供を斬っても、自慢にもならん。」
アレンは剣を静かに構えた。
「……逃げない。」
その一言で、闘技場は静まり返る。
「始め!」
開始の合図と同時に、オーガが地面を蹴った。
ドォン!!
一瞬で距離を詰める。
巨大な戦斧が振り下ろされた。
しかし――。
「……!」
アレンの姿が消えた。
オーガは目を見開く。
「どこだ!?」
次の瞬間。
アレンはオーガの背後へ立っていた。
施設で何千回、何万回と繰り返した足さばき。
無駄のない動きだった。
アレンは振り向かず、小さく呟く。
「遅い。」
剣の峰でオーガの首筋を軽く叩く。
ドサッ。
巨大な身体が膝をついた。
静寂。
誰も声を出せない。
「……嘘だろ。」
「一撃……。」
「オーガ将軍が……。」
魔族たちは目の前の光景を信じられなかった。
オーガはゆっくりと立ち上がる。
首筋を押さえながら、小さく笑った。
「……殺さなかったのか。」
アレンは剣を下ろす。
「決闘だって聞いた。」
「だから、勝負をしただけ。」
その言葉を聞いたオーガは、大きく笑った。
「ガハハハハ!」
そして、その場で片膝をつく。
「完敗だ。」
「我は貴方を認めよう。」
その姿を見た他の魔族たちも、次々と頭を下げ始める。
しかし――。
広間の奥では、数人の魔族が不満そうな表情を浮かべていた。
「まだ終わっていない。」
「我らは、あの人間を魔王とは認めん。」
反対勢力は、まだ残っていた。
そしてアレンは知らない。
本当の試練は、これから始まることを。




