第13話 反対勢力
「人間が魔王だと!」
怒号が魔王城の大広間に響き渡る。
アレンは黙ってその光景を見つめていた。
七歳の少年には、何が起きているのか完全には理解できない。
しかし、自分が歓迎されていないことだけは分かった。
古龍は玉座の前へ歩み出る。
「余の決定に異議がある者はいるか。」
その言葉に、一体の大柄なオーガが前へ出た。
身長は三メートルを超え、巨大な斧を肩へ担いでいる。
「もちろんです。」
「我ら魔族は弱肉強食。」
「強い者が王となる。」
「それは理解しております。」
「ですが、こやつは人間。」
「我らが命を預ける価値などありません。」
周囲の魔族も頷いた。
「その通り!」
「人間など信用できん!」
「七歳のガキが魔王だと?」
アレンは俯いた。
その小さな手が、わずかに震えている。
ノエルはそっと隣へ立つ。
「大丈夫です。」
「古龍様がおられます。」
アレンは小さく頷いた。
「……うん。」
しかし古龍は静かに首を横へ振る。
「ノエル。」
「はい。」
「この問題は、余が解決してはならぬ。」
「魔王となる者が、自ら越えるべき壁だからだ。」
ノエルは驚いた。
「ですが……まだ七歳です!」
「相手は歴戦の魔族ですよ!」
古龍はアレンを見つめる。
「だからこそだ。」
「魔族は言葉では従わぬ。」
「力のみを信じる。」
その言葉に、広間の空気が変わる。
オーガが巨大な斧を床へ突き立てた。
ドォン!!
「ならば決闘だ!」
「我に勝てば認めよう!」
「負ければ、その命を差し出せ!」
魔族たちは歓声を上げる。
「決闘だ!」
「力を示せ!」
「それが魔族の掟!」
アレンは古龍を見上げた。
「……僕が戦うの?」
古龍は静かに頷く。
「ああ。」
「逃げてもよい。」
「余が守ることもできる。」
「だが、それでは誰もお前を魔王とは認めぬ。」
沈黙が流れる。
アレンはゆっくりと拳を握った。
施設で過ごした六年間。
生き残るために振り続けた木剣。
逃げ続けた日々。
(もう……。)
(逃げるのは嫌だ。)
アレンは一歩前へ出た。
そして、大きなオーガを真っ直ぐ見つめる。
「……分かった。」
「戦う。」
その一言に、魔族たちは驚いた。
「ほぉ……。」
「泣いて逃げるかと思ったが。」
オーガは不敵に笑う。
「よかろう。」
「三日後。」
「魔王城・闘技場。」
「そこで貴様が本当に王となる資格があるのか、試してやる。」
アレンは静かに頷いた。
「うん。」
その瞳には、恐怖よりも強い決意が宿っていた。
施設では生き残るために戦った。
今度は、自分の居場所を守るために戦う。
その戦いが、魔王アレンの最初の試練となる。




