第12話 魔王城
アレンが古龍のもとで目を覚ましてから数日が過ぎた。
傷はすっかり癒え、食事も満足に取れるようになっていた。
それでも、古龍は一つだけ言った。
「今日、お前を連れて行きたい場所がある。」
アレンは静かに頷く。
「うん。」
ノエルもその後ろに立つ。
「参りましょう、アレン様。」
三人は森の奥へ歩き始めた。
木々を抜けると、目の前には巨大な山が現れる。
その山腹には、黒い石で造られた巨大な城がそびえ立っていた。
「……大きい。」
七歳のアレンは思わず息を呑む。
高さは雲に届くほど。
巨大な門。
黒い塔。
まるで世界そのものを見下ろしているような威圧感だった。
古龍は静かに言う。
「ここが魔王城だ。」
アレンは目を丸くした。
「魔王……城?」
巨大な門がゆっくり開く。
ギギギ……
中には数百体もの魔物が整列していた。
ゴブリン。
リザードマン。
オーク。
オーガ。
ワイバーン。
様々な魔族が、一斉に古龍へ頭を下げる。
「古龍様、お帰りなさいませ。」
アレンはその光景に圧倒されていた。
その時だった。
魔族たちの視線が、一斉にアレンへ向く。
「……人間?」
「子供じゃないか。」
「なぜ古龍様が人間を……?」
ざわめきが広がる。
古龍はゆっくり前へ出た。
「静まれ。」
その一言で広間は静まり返る。
古龍はアレンの肩へ手を置く。
「紹介しよう。」
「この子が、次代の魔王だ。」
その瞬間。
広間は騒然となった。
「なっ!?」
「人間が魔王だと!?」
「冗談ではない!」
「我ら魔族を侮辱する気か!」
怒号が飛び交う。
ノエルは心配そうにアレンを見る。
しかしアレンは何も言わない。
ただ静かに、魔族たちを見つめていた。
古龍はため息をつく。
「やはり、こうなったか。」
反対する魔族たちの目には敵意が宿っていた。
この日。
魔王城では、新たな魔王を巡る大きな火種が生まれた。
そしてアレンはまだ知らない。
数日後、自らの力でこの反対勢力をねじ伏せ、本当の意味で魔王として認められることになるのを。
――第13話「反対勢力」へ続く。




