閑話
それからの夕食の時間はとても気まずい空気が漂っていた。とは言っても樹と那由多がその空気を出しているだけで、父と母は我関せずといった感じで夕食を食べている。
「なぁ、なゆ。醤油取ってくれないか?」
樹のお願いに那由多はそっぽを向いた。
「なんで、そんなに怒ってるんだよ」
その発言に那由多は少しばかり苛立った。
「分かった! 俺が悪かった。今度、何でも言うこと聞いてやるから機嫌を直してくれ」
何でも? その言葉に那由多の心が揺らぐ。それは、あんなことや、こんなことでもいいのだろうか?
一体何を考えているんだと思った那由多は邪心を振り払う為に首をブンブンと横に振った。
「そんな、首を思いっきり横に振る程嫌がらなくてもいいだろ」
「い、いや、これは違います!」
一生、口を利かないつもりだったが思わず声が出てしまった。那由多は「しまった」という表情を浮かべていると樹を始め、家族みんなは那由多を見て不思議そうに首を傾げた。
「一体、何が違うんだ?」
「…う、うるさい! なんでもないです! ご馳走様でした!」
那由多はそう言うと慌てて自分の部屋に戻っていった。樹はその背中を見て「おかしなやつだなぁ」と呟き、自分で醤油を取った。
食事を済ませた樹は自分の部屋に戻った。何度か那由多の部屋に行って機嫌を取ろうと思ったのだが、こういう時に話しかけるとさらに機嫌が悪くなりそうなので止めておくことにした。
ベッドに横たわると、今日露木と話した裏神様のことを思い出していた。色々考えたが、結局自分には関係がないことだろうということで結論が出た。
それからしばらくすると眠気が襲ってきた。明日は服装検査があるので早めに寝ようと思った樹はそのまま身を委ねて眠りに就くことにした。




