廃工場にて 其の五
「…つまらんな、興が削がれる。まぁ、低級の神と為り損ないに言っても仕方のないことなのだが。
あまりにも実力差があり過ぎて戦う気すらも起きぬと言うのならば私の力を試すためにここら一帯を消し飛ばすしかない」
禍津日神はそう言うと自分の右手の手のひらを上に向けたまま自分の胸の前に持ってきた。そして、その手の平の上に禍々しい黒い球体の様な物を作り始めた。
「よせ! やめろ!! そんなもん放ったらこのあたりが消し去るどころの騒ぎじゃすまない”」
死神が叫ぶ。
「そんなに止めてみたいなら力づくで止めてみればいいだろう。私はここから動かぬぞ?」
禍津日神は三人を見据えたままそう言った。死神は生唾を飲み込む。止めなければ、と頭で分かっていても体が動くのを拒む。
その様子を見ていた禍津日神はため息を一つつき、手の平に作っていた球体を消した。
「本当につまらん奴らだ。ここまで脅したのに誰も止めに入ってこないとは。
五千年の間でだいぶ腑抜けが増えたものだ。
仕方ない。それならば、こちらから仕掛けさせてもらう。流石にそこまですれば嫌でも体は動くだろうからな。
…武器は使うまでもなかろう」
禍津日神はそう言うと左手に持っていた刀を上に放り投げた。すると、投げた先の空間が裂け、刀を飲み込んだ。
「それでは、遠慮なくいかせてもらうか。ちょっとは楽しませてくれよ」
そう言うと禍津日神は三人の目の前から消えた。そして、死神の目の前に現れ、思い切り振りかぶった拳を放った。しかし、攻撃を読んでいた死神は背中を仰け反らせ避けた。そして、そのまま後方回転をした要領で禍津日神に蹴りを放った。死神の攻撃は禍津日神に当たり、少しだけ禍津日神は怯んだ。
その隙を見逃さなかった裏神と祓川は追撃を仕掛けた・裏神は右側から己の武鬼である煙管を禍津日神のこめかみを目掛け振った。祓川は左側からナイフを突き立てた。しかし、二人の攻撃は寸前で禍津日神に掴まれた。
「面白い。やれば出来るではないか。私も徐々に調子を上げていかなくてはな」
禍津日神は不敵に笑い、そう言った。
裏神と祓川は掴まれた武器を何とか振り解き、距離を取った。禍津日神を見ると死神から受けたダメージはほとんどといって無さそうだ。
「…ふぅ、やれやれ、したらば妾もそれなりの本気をだそうかの」
裏神はそう言って腕を回した。
「は? お前大丈夫か? ハッタリ言ってる場合じゃないだろ」
「いいから黙ってそこにおれ、お前たち二人と一緒に戦っておると足手まといになるだけじゃ。
この体を頼んだぞ」
裏神様はそう言うと那由果の体から抜けて、着物姿の本当の姿を現した。そして、持っていた煙管で死神の前に線を引いた。
「な、なにすんだ!」
「死にたくなければ、この線から出ないようにすることじゃ。
妾の力をそこで見ておれ」
裏神はそう言ってニヤリと笑った。




