閑話
リビングへ降りると食卓には朝食が準備してあった。母は洗い物をしており、父は鞄を持って仕事に行くところだった。双子はと言うと、ソファーに座り仲良くココアを飲んでいた。
退院したばかりだと言うのに良くも悪くも変わらない我が家の日常があった。
「おはよう」と樹が言うと父と母は体調を心配してきた。特に変わったことはないと話すと二人は安堵した表情を見せた。その後すぐに父は仕事に出たので俺は椅子に腰掛け、用意してあった朝食を食べた。
朝食を食べながらテレビに目をやると朝の情報番組が流れていた。どうやら離れた県で山が丸々一つ氷漬けになったらしい。火事で山が一つ燃えたとかなら聞いたことがあるが、氷漬けになったというのは初めて聞いた。
不思議なこともあるんだな。と思いながらテレビを見ていると、またどこからか現れた裏神様が話しかけてきた。
「鬼じゃな」
「鬼?」
樹は裏神様の言葉に対して小さな声で質問した。
「あぁ、鬼じゃよ。最近は割と大人しくなったと思っていたのじゃが、大胆なことをするとはな。
まぁ、妾には関係のないことじゃ。鬼には鬼の専門家がおるからのぉ」
「へぇ、やっぱり世の中は広いんですね」
「そういうことじゃな。
まぁ、気にすることはないということじゃ。妾らの仕事は別じゃからな」
裏神様はそう言うとどこかに消えた。樹は消えた裏神様を気にすることなく朝食を食べ進めた。
朝食を食べ終えた樹はいつも通り学校へ向かった。
学校に到着して自分の教室に入ると熱烈な歓迎を受けた。皆、入院していたことを心配してくれたらしい。樹は感動して涙腺が緩んだが、何とか涙を流すことを耐えた。
席に着いた樹の周りをクラスメートが囲む。病院での生活を話していると朝のホームルームが始まる時間となった。
それからは普段と変わらない学校生活を過ごした。夕方になり学校から帰宅すると玄関には那由多と那由果の靴の他に見慣れない靴が一つあった。誰か来ているのだろうかと思い、二階に上がると樹の部屋に那由多と那由果、それとどこかで見た顔の女の子がいた。
「あっ、お兄ちゃん。お帰りなさい」
「ただいま。というか、俺の部屋で何してんの」
「友達が遊びに来たから、お兄ちゃんの部屋借りてる。私たちの部屋狭いから」
悪びれた様子も無く那由果はそう言った。友達の女の子は樹を見てペコリと頭を下げた。樹もそれにつられて頭を下げる。
「あっ、あの、突然お邪魔してごめんなさい。えっと、那由多ちゃんと那由果ちゃんの友達の遥香です」
どこかで見た覚えのある女の子は丁寧に挨拶をした。どこで見たっけなー、と自分の記憶の中を探っていると、またどこからともなく裏神様が現れた。
「昨日の子じゃな。早速、友達が出来たみたいで良かったわ」
裏神様がそう言うと、樹は思わず、「あー、言われてみれば」と口に出した。すると、那由多を始め、部屋にいた全員はこちらを見て不思議そうに首を傾げた。樹は「ごめん、こっちの話だから」と言って苦笑いをした。那由多は「そうですか」と口にして、三人で遊び始めた。省かれ者となった樹は荷物を置いて、あてもなく外に出た。いわゆる散歩というやつだ。その散歩には裏神様も付いて来た。
「どうして、外に出たのじゃ?」
「妹は俺の部屋を占拠していますし、その友達にいきなり変なことを言ってしまったら、家に居づらくて」
樹がそう言うと裏神様はうんうんと頷いた。
「それで、どうして裏神様までついてきたんですか?」
「今日は暇な日じゃからな。毎日仕事ばかりしていては疲れが溜まる一方じゃ。妾も羽を伸ばしたくなる日もある」
「神様も色々と大変なんですね」
「まぁ、妾が選んだことじゃ。仕方のないことなのじゃ」
「え? 神様って選べるんですか?」
「お前には関係のない話じゃ。
まぁ、いずれ話してやらんこともない」
それから裏神様と他愛もない話をしながら散歩をして時間を潰した。樹が家に帰ると双子の友達、遥香は帰宅していた。
それから、双子とオセロをしたりして今日一日を終えた。




