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番外編:悪魔が悪魔である理由

圭斗が魔界王子と呼ばれるようになった後のお話です。

 それは、圭斗に魔界王子の呼び名が定着し始めた頃のことである。


「なんでそんなに悪魔扱いなんスか? 部長は魔王でしたっけ?」


 不意に少年漫画雑誌を読んでいた圭斗が顔を上げて問う。

 十夜はいつも通り、仏頂面で「知らん」とだけ答える。

 オカ研の人間は悪魔と生贄の二通りに分けられ、紗綾は後者である。


「先生も極一部の生徒からは悪魔扱いっスよね?」


 圭斗がちらりと視線を向ける顧問の嵐は大半の生徒が脅迫によって顧問をさせられている可哀想なイケメン教師だと思っているが、実態は前者の方である。紛れもない悪魔だ。


「月舘はそんなこと思ってないよね?」


 問われて、紗綾は困った。もちろん、思っている。大いに思っている。それを彼も知っているはずだ。

 そういうところが悪魔的なのだ。それどころか、彼には否定しようのない悪魔的なエピソードが存在する。


「むしろ、先輩と田端先輩発信的な?」


 圭斗に言われて、紗綾はいたたまれなくなる。親友の香澄は確かに担任でもある嵐を敬遠しているところがある。

 それは、紗綾とは違う理由らしかったが、教えてはくれなかった。


「だって、先生は部活を潰してますよね?」


 視線に耐えきれず、紗綾は事実を口にする。

 オカ研の部室がある並びは今や放課後になると誰も近付かないが、かつては他の部活の生徒が寄りついていた。

 それが、最終的に日本文化研究同好会となり、嵐に一掃された部である。妙な物音が聞こえる、変なものを見た、ポルターガイストが起きたなどと騒ぎ立て、ノロイローゼになる生徒が続出し、今はその部室を嵐が物置として管理し、その備品だったものを遺物として時折持ち出している。先日、リアムを座らせた座布団がそうである。

 しかし、彼らが体験した現象の中には嵐が人為的に起こしたものもあるのだ。


「いや、あれはさ、オカ研守るためっていうか、あちらさんが大騒ぎしてうざいからさ……」

「その話、詳しく聞きたいっス」


 嵐は弁解するが、圭斗は余計食い付いてしまったらしかった。


「いやいや、黒羽が何で魔王かってのが先でしょ?」


 嵐は何とか話を逸らしたいらしかったが、圭斗も何もわかっていないわけではない。


「人避けなんスよね? 俺のことだって、わざと魔界王子とかわけわからない呼び名で流したり」

「そうそう、冷やかしが一番困るからね。本当に力が必要な人にしか手は差し伸べないんだよ」

「問題はその悪魔関係がただの誇張じゃなくて、本気で怖がられるのかってことっスよ。確かに部長は目つき悪いし、二言目には呪うとか言うっスけど、先輩方の中にはオカ研って聞くだけで震え出す人がいるって言うし、何かトラウマになるようなことでもしたんじゃないっスか?」


 圭斗の推測は間違いではない。そして、紗綾はトラウマの正体を知っている。紗綾自身初めて見た時は衝撃的であった。


「あれですよね……オカ研名物、エクソシスト」

「エクソシスト? 映画の?」


 紗綾はコクリと頷く。映画を見たことはないが、皆がそれをそう表現する理由は理解できる。


「あー、そうそう、八千草のせいだよ。あいつが、迷惑すぎるから」

「あー……うざいキャラっスよね、あの人」


 二代目部長は定義上生贄側の人間ではあるが、オカ研の中では悪魔以外の何者でもなかった。


「俺が知る限り、最悪の霊媒体質。ほんと、卒業してくれて清々するよ」


 嵐がうんざりした様子で言い、ちらりと見れば十夜も小さく頷くのが紗綾には見えた。その悪魔の一番の被害者にして生贄は魔王であるはずの彼なのだ。

 いつも紗綾は何もできずに見ていた。たまに、他の生徒が巻き込まれないように遠ざける係を言い渡されたが、紗綾の言葉を聞いてくれる人間は少なかった。


「しょっちゅう何かくっつけてきて、しまいには取り憑かれて校内で大暴れ。黒羽は尻拭い係、魔女がいた頃はもっと凄かったよ」


 オカ研初代部長、毒島鈴子は本物の魔女だと紗綾は思っている。オカ研関係者の中で最も強い力を持つ彼女は悪魔か生贄で言えば、紛れもなく悪魔だが、何よりも魔女なのだ。


「その時の除霊の様子が凄まじいってことで色々言われちゃってるわけ。特に魔女がやると最終的に変態ショー?」

「八千草先輩、毒島先輩のこと好きですからね……」


 十夜の除霊も光に対してはなかなかに荒っぽいところがあるが、鈴子はもっと酷いらしかった。

 除霊のためとは言っても、他の生徒の前で平然と光を踏み付け、その上、正気に戻ったはずの光が『もっとー!』と叫ぶというドMっぷりを見せ付けたと言うのだから。


「あれ、ほんとまいるよ。毎回毎回八千草が嬉しそうな顔してるのを見ると、ほんと埋めたくなったよ」

「可愛い生徒達騙して心は痛まないんスか?」

「別に騙してないよ。勝手に解釈してくれちゃってるのが都合がいいだけ」


 嵐は策士なのだ。直接的に手を下さない。けれど、その真実を知る者だけが彼を悪魔と定義する。


「うっわ、その言葉録音して全校生徒に聞かせてやりたいっスね。あと、日頃からの紗綾先輩に対するセクハラ発言」

「セクハラじゃないよ。ストレートな愛情表現」

「先生、何でいつも私をからかうんですか?」


 愚問なのかもしれなかった。そこに紗綾がいるから、以外に何があると言うのだろう。

 だが、嵐は黙り込み、圭斗がケラケラと笑い出した。


「報われないって可哀想っスね」

「それ、そのまま君に返すよ」


 嵐は恨めしげな視線を圭斗に向けるが、紗綾には最早何の話なのかわからなかった。


「俺はまだまだ見込みがあるっスよ、ね?」


 ね、と言われても困る。縋るように見た十夜はよくわからない本に夢中だ。


「君こそ、アウトオブ眼中じゃないかな」


 嵐が口を挟み、二人は言い合いを始めてしまう。

 仲が良いな、とズレたことをぼんやり考えながら、紗綾もよくわからない本に手を伸ばす。オカ研にいる以上、最低限覚えておかなければならない知識として課題の本が部室に積まれている。最近はもう関係ないのではと思いつつ、時折、逃げ道になっている。

 だが、嵐も圭斗も楽しそうで、そんな平和な日常が紗綾には嬉しかった。

これにて完結とさせていただきます。

またいずれ番外編は書いてみたいなぁと思いつつ。

現在執筆中の続編でも何人かのキャラが登場したりします。

ではでは、ここまで読んで下さり本当にありがとうございました。

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