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ピザとトマトとパプリカ

 さて、私たちは食事を終え、食後の軽い談笑をしています。


 そしてフェルディナンド様が言いました。


「当面の間、ユーリ様にはこちらのホープスブルク宮殿にて過ごしていただくことになります」


 ここの正式名称はホープスブルグ宮殿、つまりハプスブルグの宮殿で、ここで生まれた歴史的に有名な人物の中には、マリー・アントワネットがいますね。


 21世紀において世界で最も大きな宮殿とされていたはすで、客室の数も13世紀に建造された旧宮殿(スイス宮殿)だけでも2000以上はあったはず。


 いやこの世界のこの時代ではもう少し少ないとは思いますが。


「わかりました。

 ではよろしくお願いいたします」


「それとユーリ様が迷い鳥フェアローレナー・フォーゲルであるという事実は当面の間は伏せておくことにします」


「えっと、私が迷い鳥フェアローレナー・フォーゲルであること伏せていただくのは全く問題ありませんが逆に何か問題でも?」


「いえ、あなたのアイデアを私たちが考え付いたことになってしまいますが、ユーリ様はそれでよろしいのでしょうか?」


「え、私としては困ってる人を直接助けるなどということも無理なわけですから全然かまいませんよ」


「そうですか、では今日はこのくらいであとはゆっくりお休みください」


「わかりました。

 いろいろお気遣いいただきありがとうございます」


 お二人との謁見を終えた、宮廷内に用意された客室に案内され、私はしばしトウモロコシのレシピについて考えていました。


 この場合のレシピはこの時代のこの地域における、貧しい人でも容易に調理ができて食べられるものでなければいけません。


 しかし、貧しい家庭では、調理のためと暖房のための火の熱を無駄なく使えるよう居住空間の中央にしつらえた炉で調理をせざるを得ません。


 この場合鉄製の三脚に粘土でできた土鍋を乗せるしかない場合がほとんどです。


 そして土鍋というのは空焚きしてしまうとすぐ割れてしまうのですよね。


 この時代では山に入って狩猟をすることは貴族や領主しかできず、湖や川などでの漁の権利も領主が私有化していて、領主の雇い人だけが漁師として認められ農民は魚を買うしかできなかったのですね。


 そのため魚は肉ほど高くはないとはいえ安くはないのです。


 運よく魚が手に入った場合はシチューなどに入れるか、串にさしてあぶり焼きにして食べるようです。


 日本であれば米を炊く竈もあるのですが、ヨーロッパの場合は領主がパン窯を独占しているため使用料を払ってパンを焼くか、都市部ではパン屋でパンを買うしかなかったりもします。


 なので、貧しい農民はポリッジやポレンタしか食べることができない場合も多かったわけです。


 しかし宮廷であれば石窯(オーブン)や鉄製の焼き網や鉄板(グリル)を使えますし、鉄製のフライパンや大きさも材料も様々な焼き串・銅製の平鍋・深鍋・吊り手付きの大鍋(ショドロン)・ケトルなどがあるので炙る・茹でる・煮る以外にも焼く・揚げる・蒸すなども可能です。


 燃料としては薪のほかにほかに木炭が多く木材の枯渇によってそろそろ石炭も使われるようになったはずですね。


 ただこの時代の調理器具は銅が多く、炒めるという高い火力が必要な調理法は鋼鉄が必要なためそういった調理技法はなかったはずです。


 さらに焼き菓子を作るためのパテやタルト・フラン・ウブリやワッフルの焼き型などもあり、ポットや大鍋を簡単に火からおろし焦げ付きや空焚きを防ぐことができる、調節可能なフック付の自在鉤(クレーン)もあります。


 あと食器も庶民は木製の皿だったりしますが、裕福な家では真鍮製の皿、宮殿で使われている食器やカトラリーは銀製だったりもします。


 飲み物を飲むためのものは農民などでは木製か銅製のコップですが、裕福な家では真鍮製宮廷だとガラス製のゴブレットなどが使われています。


 そういう理由で宮廷であればかなりのバリエーションのある調理法ですが、土鍋しか調理の手段がないとぐんとバリエーションが減ってしまいます。


 それこそ粥やシチューぐらいなのですよね。


 ではどうすればいいのでしょうかといえば、まず焼くという料理法のためにはメキシコの先住民(ネイティブ)が使っていた粘土(テラコッタ)焼き板(コマル)を取り入れればよいのではないでしょうか。


 ついでに粘土で作ったタンドリー窯も作ってしまえば調理のためのバリエーションが増える気がしますし、個人でも簡単にパンが焼けるようになるはずですね。


 小さめのタンドリー窯と焼き網を合わせれば七輪が作れそうです。


 そうすればメキシコ料理のトルティーヤのようなものに加えてコーンの粉と小麦粉を合わせて焼く、コーンブレッドも焼けるのではないでしょうか。


 しかし、タンドリー窯だとパン生地を窯の横に張り付けて焼くので、ピザのような何かを乗せて焼くような料理は難しいのですよね。


 できれば野菜やチーズなどを一緒にのせて食べられるピザを普及させたいと思うのです。


 となると、ダッチオーブンのように使える耐熱性のある粘土を使った蓋つきココット型のようなものが必要かな?


 これは少し試行錯誤してみないとだめですね。


 そしてピザを焼くとしたら具材としてトマトとパプリカはぜひ欲しいところです。


 トマトのトマトソースはピザだけでなくパスタと絡めてもおいしいですしね。


 しかしこのころ、トマトは有毒な植物であるベラドンナに花が似ていたため毒があると思われていたこともあって、観賞用に利用されるだけで、広く食用になったのは、19世紀以降です。


 とはいえ実際にトマトにはトマチンという有毒成分が含まれていて、とくに花には多量に含まれていたりもするのですけどね。


 その他葉や茎、ヘタや未熟な果実などの青い部分にもトマチンは多く含まれているので、そういった部分を多量に食べると死ぬ可能性もあるのは確かで食中毒を起こす可能性は高くなります。


 とはいえ未熟な果実でも数kgは食べないと死にはしないですけどね。


 同じような理由で芽の周りの緑の部分に含まれるソラニンが猛毒なジャガイモもこのころは観賞用の植物だったりします。


 またピザによく使われる野菜であるピーマンやパプリカ(ペペローニ)は唐辛子の仲間ですが唐辛子の辛味成分も実は毒だったりしますね。


 ナス科の植物は毒を持ってるものが多いの注意が必要だったりしますが、食べる部分に気をつければおいしく食べられたりもします。


 今度カール様かフェルディナンド様、あるいはヨハン様にお願いしてトマトやピーマンやパプリカ(ペペローニ)を持ってきていただきましょう。


 トマトが赤くなると医者が青くなるといわれるように、トマトは健康にとても良いですからね。


 コーンブレッド、あるいは食べ残して固まったポレンタを焼いて食べる焼きポレンタに乗せて焼けばきっとおいしく食べられると思いますし。

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