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19 対話

14層の階段を下り、俺たちは15層……聖人の門にたどり着いた。

人の迷宮と同じく、聖人の門以外には何もない広い空間。

前に見たものと、全く同じデザインの門が正面に鎮座しており、やはり、同じ文言が刻まれていた。



あなたは聖人ですか?


YESなら→ENTER

NOなら →LEAVE



「んで? どうやってこの門を開けるんだ?」


ひょい、と俺の右下から顔を出し、ロックが訊いてくる。


「いや、凄い簡単なんだけどな」

「ぁん? コレはアイゼンガルド(ウチ)の技術者や研究者がこぞって研究しても開かなかった扉だぜ? いくら聖人だからってそんな簡単に……」


そう言うロックを尻目に、人差し指で『ENTER』に触れる。

そして。


ガゴン、と大きな扉の右下が、内側に開いた。


「開いたぞ」

「……そっちが開くのか……」

「初めての時は俺もそんな反応だったよ……行こう」

「あぁ……」


釈然としない様子のロックを促して、俺たちはその開いた扉を潜り抜けた。



――――――



――やぁ。


――おう。


――あれ? 通じる? 日本語。


――通じてるし、お前と話すのは2回目だな。


――あ、そうなんだ。じゃあ自己紹介は要らないかな?


――あぁ。聖人ユウト。


――そういう君も聖人かな?


――そうだ。俺はレイジ。キリバレイジだ。……迷宮の踏破はここで二つ目。一つ目の迷宮は人の迷宮。そこで『情報端末コンソール』にアクセスして、人間族の心に『平和』を取り戻した。


――えっ。じゃあキミ、根源魔法の才能レベル、2以上なんだ。


――3と……星が三つついてる。


――エクストラがみっつも。へぇえ……凄いね、それは。それなら『情報端末コンソール』越しじゃなくても魂に干渉できそうだ。


――え、そんなこと出来るのか?


――うーん、わからないけど、理論上はたぶん。まぁ種族全体に一度に干渉、とかは出来ないだろうけど、肉体の接触があれば、その相手の魂に干渉することは出来ると思うよ。


――……。


――うん? どうかした?


――いや、何でもない。……えぇと、それで、『無限物質エタニティマター』について、何かわかったか?


――ああ、人の迷宮から来たんだっけ。えっと、そこからなら……あぁ、ひとつ新情報があるよ。


――マジか。教えてくれ。


――その前に、レイジだっけ。君はどこまで知ってる?


――『無限物質エタニティマター』についてか? いや、何もわからない。ただ……アレに触れた時、ものすごい憎悪を感じた。……頭がおかしくなりそうなくらいのな


――あぁ……アクセスしたなら……そうだね。でも、あれは……。


――意図的なもの、だな。『平和』という感情を忘れさせるための。


――とても念入りだよね。まるで、アレを仕込んだナニかは、世界が平和になったら不都合があるみたいだ。


――多分、そうなんだろうな。その理由までは……?


――わからない。


――そう、か。


――次の僕なら何か知っているかもしれないけど。


――ああ。次のユウトに聞いてみるよ。


――そうして。……えっと、そうだ。『無限物質エタニティマター』についてだったね。


――何かわかったか?


――無限に資源を生む物質。まあ、現実的にあり得ないシロモノだよね。いくらこの世界がファンタジーって言っても、基本的な物理法則は地球のそれと変わらない。相違点を上げるなら魔法だけど、まあアレも一応物理法則に従って発動してるから。


――そうなのか?


――うん。この世界には、空気中に魔力っていう特殊な元素があるんだよ。それは生物が体内でも生成していて、基本的にはその元素を触媒に空気や物質に意志の力みたいなものを伝播させて……この話、長くなるけど聞く?


――……いや、やめとく。興味はあるけど。


――懸命かも。あんまり時間なさそうだし。えぇと、それで……そう。物理法則ね。これは基本的に地球のものとそう変わらない。万有引力もあるし、質量保存の法則もきっちり適用されてる。例外はあの『無限物質エタニティマター』だけだ。


――なるほど。


――無限に物質を生む物質。でもそれも、無から何かを生み出しているわけじゃない。ちゃんと"ナニか"を消費して、その消費したものに見合った物質を作り出してる……いや、多分加工している? のだと思う。


――そのなにかってなんだ?


――そこまでは分かってないかな。ただ、『無限物質エタニティマター』は恐らくだけど、人の想いや願いを反映して物質を生み出してる。


――想いや、願い……?


――うん。大雑把なことを言えばだけど、例えばドワーフたちが、金しか必要としないっていう意思統一をはかったら、迷宮に生まれる資源は全て金になる。


――そうなのか?


――現実的じゃないけどね。この迷宮自体もそう。大本が『無限物質エタニティマター』だからね。僕は体裁を整えたけど、それより後のこの迷宮の進化なんかには関与してないからね。この迷宮に関していえば、ドワーフたちの意識が反映されて、迷宮が最適化されていってるハズだよ。


――迷宮って進化したりするのか……?


――面積が広くなったりはしないけど、中身は僕が造った頃より大分様変わりしてるだろうね。


――あの巨大ロボットも……?


――巨大ロボット?


――少し上の階層の大広間で、戦闘ロボみたいなのが造られてたんだよ。それはユウトの差し金じゃないってことか?


――あ、それは僕だ。……だって地下で製造されてる決戦兵器って格好良くない……?


――……かっこいい。


――だよね!


――アレ、動くのか?


――勿論! 搭乗もできる!


――マジか!!!


――【機械】の才能が2以上なら動かせるはずだよ。莫大な魔力を使うから、また別途その問題の解決は必要だけど。


――俺には乗れないじゃないか……。


――僕にも無理だったよ……。まぁ、そんなわけだから、この迷宮を維持するために、何かが消費されてるのは確実だよ。それが何かまでは分からないけどね。


――そうか。わかった。ありがとう。参考になった。


――いやいや。同郷のよしみだよ。……他に何か聞きたいことある?


――いや、とくには……あ、まった。そうだ。マシナーズハートっていう古代遺物アーティファクトについて教えて欲しい。


――マシナーズハート? 僕が造った機械の魂(マシンズソウル)の事かな。


――なんだそれ?


――機械に魂を与えようと思って造ったんだけど、魂の定着が上手くいかなくてね……。あ、でも根源魔法Lv3のキミなら完成させられるかも。モノ自体は25層にあるよ。


――そうか……。どうしたらいいのかわからないけど。


――疑似的な人格を作り上げるところまでは出来たから、それを魂として機械に定着させられれば……。簡単に言えば『情報端末コンソール』にアクセスしたときと同じようにすればいいよ。


――なるほど、わかりやすい。


――機械に心を与えるっていうのも、なかなかにファンタジックで素敵だからね。ぜひ完成させてよ。


――ああ、わかった。あとは……あぁ、そうだ。集合知って知ってるか?


――集合知……? なんだい、それ?


――……やっぱり知らないのか。それなら……今のところ訊きたいことは特にないな。


――そう。わかった。次は魔人族の土地に行くから、その時の僕なら新しい情報を持ってるかも。


――ああ、助かるよ。次は魔人族の土地、な。


――うん。じゃ、良い旅を。



――――――



そうして、意識が浮上する。

ぺちぺちと頬を叩かれる感触があった。


「おにいちゃーん?」

「ん、ミリィ……?」


頬を叩いているのはミリィだった。


「だいじょうぶ?」

「ん、あぁ……ユウトと話してた」


体を起こす。

辺りを見回すと、そこは、前回ユウトと会話した後に訪れた、小さな小屋のような所だった

ボロボロのテーブルとイス。それ以外には何もない。

椅子にはアリスが、脚を組んで腰かけていた。

視線の先には小さな扉がひとつあるのみだ。


「おぅ、レイジ。起きたのか。急にこんな場所に飛ばされて、お前さんは気ィ失ってるし、どうしたもんかと思ったぜ」

「大丈夫か?」

「あぁ、大丈夫だ。どのくらい経ってる?」

「ほんの数分なのじゃ」

「そっか。ユウトと話してたんだよ」

「ふむ。なにかわかったのじゃ?」

「大したことは何も。……ああ、マシナーズハートの在り処は分かったぞ」

「何だと!?」

「それがロックの求めてるものかどうかは分からないけどな。機械に心を与える古代遺物アーティファクトらしいけど……それであってるか?」

「その通りだ! どこだ!? どこにある!?」


体を乗り出して、前のめりになるロック。

鬼気迫る表情だ。よほど追い求めていたのか。


「25層にモノ自体はあるらしい。ただ……」

「ただ、なんだ?」

「完成はしてないらしい。魂の定着? には俺の才能が必要なんだと」

「……なるほど、な」


消沈したように、ロックは再び腰を下ろした。


「……そんなに落ち込まなくても。別にそのくらいなら手伝うぞ」

「本当か!?」

「あ、ああ……本当に出来るかどうかわからないけどな」

「助かる!」


がっしりと手を握られる。


「お、おぉう……」


仰け反った。


「そうと決まれば行こうぜえ! 早速よぉ!」

「お、おう……急に元気だなロック……」

「すまない……王は随分と機械に心を与えることにご執心でな……」

「応よ! 機械に心を与えられれば……それはもう機械を超えた機械だ。それこそが俺の長年の研究の到達点だぜ! 最初こそ古代遺物アーティファクトに頼ることにはなるが、そのうち自力でその境地に至ってみせる! そのためにはまず成功例を一つでもだな……」


目を輝かせてまるで子供の様に語るロック。


「ほんと、よくわからぬ価値観なのじゃ……」


それを見て、アリスが呆れていた。


「まぁ、なんにせよ、全部迷宮を踏破してからな。……いこう」

「ああ」

「応よ」

「うむ」

「はいなの!」


そして俺は小屋の扉に手をかけた。

本日はここまでになります。

最近PVが伸びていて、作者は大変驚き慄いて、そして同時に感謝の念がたえません。

評価やブックマークも入れて頂き、本当にありがとうございます!


これからもご期待に沿えますよう邁進してまいりますので、応援のほど、よろしくお願いいたします!


2章はここからが本番です。

まだまだ皆様に楽しんでいただけますよう執筆してまいりますので、評価やブックマークでの応援、どしどしお待ちしております!作者のモチベーションに、本当につながります!!


それでは、また明日20時の更新になります!よろしくお願いいたします!

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