↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/149

20 迷宮探索Ⅵ

機械の迷宮、第16層。

小屋の扉を抜け、俺たちがたどり着いたのは、人の迷宮と同じ、ただひたすらに真っ直ぐ石畳が続く、狭い通路だった。

どうやら聖人の門より下は、全てこの作りになっているらしい。


「随分と迷宮らしくないところに出たな……」


ダイモンが辺りを見回しながらそう言う。

それを聞いて、ふ、と笑みが漏れた。


「な、なんだよ?」

「いや、前に人の迷宮を踏破したときの同行者も同じことを言ってたな、と思ってな」

「そ、そうなのか?」

「その時にも言ったけど、どっちかっていったらこういう通路が俺的には迷宮、って感じがするんだよな」


歩きながらそう言う。

狭い通路に俺たちの話声が反響して、わんわんと遠くまで響き渡る。

『遠見』は放っているが、恐らく5か10階層刻みにボスが出てくる以外は安全だろう。

『遠見』には何の反応もない。


「ひたすら真っ直ぐだな……」


奥を『遠見』しながらロックが言う。


「あぁ。多分5か……10か。キリのいい階層まではこの調子だ。魔物も出ないし、壁も普通の石だ」

「ほぉーん」

「ただ、キリのいい階層にはそれぞれ、強い魔物が配置されてる。実質その魔物の撃破が迷宮踏破の条件みたいなところはあるな」

「なるほどなぁ。人の迷宮もこんな感じだったのか?」

「あぁ、そうだな。その時は……ゴブリンキングと、聖銀ミスリルのリビングアーマー。あとは、オーガキングだったかな」


最奥には白騎士もいたけど。

……ここにも、多分居るんだろうな。


「ゴブリンキングだぁ!? そんなモノが居んのかよ!?」

「あぁ。結構やっかいだったな。300匹くらいのゴブリンを率いてた」

「300……!? 大隊バタリオン級じゃねぇか! 大隊バタリオン級の魔物王は結構やっかい、で済むレベルじゃねぇぞ!?」

大隊バタリオン級……?」

「おいおい、知らねぇのかよ……。本当に賢王の眷属か、お前さん……」

「言われてるぞ、アリス」

『言われてるのはお主なのじゃ』


アリスが呆れたような声を返してきた。

……だって俺異世界人だもん……。


「統率するボスが居る魔物群の単位だよ。小隊プラトーン級、中隊カンパニー級、大隊バタリオン級、師団ディビジョン級、軍団レギオン級だ」

「へぇ、なるほどなぁ。因みに、それ以上は?」

「それらの群体の個数で大体識別するんだが……それら全ての総軍を指揮するような大将が居るならそれは災害ディザスター級だ。今まで現れたって記録はないけどな」

『因みに、ゴブリンキング等の"王"が統率できる単位は大隊バタリオン級までなのじゃ』

「え、キングより上の魔物が居るってことか?」

『うむ。ゴブリンを例にいうのなら、ゴブリンエンペラーなどがおるのじゃ。それこそ数千年単位で現れておらぬがの』

「……数千年前には現れたことがあるのか……」

『記録ではの。わしは実物を見たことは無いのじゃ』

「そんなのがほいほい現れても困るけどな……」


あの統率された300体でも厄介だったのだ。

あれ以上になると、俺一人ではどうしようもないだろう。

頭だけ潰せば全員自害するとはいえ。


大隊バタリオンでも、ほいほい現れていい規模の魔物じゃない……」


話を聞いていたダイモンが顔を曇らせてそう言う。

ミリィが首をかしげながら、


「でもお兄ちゃんとお姉ちゃんならすぐにばーっってやっつけちゃうよ?」

「いや……まぁ、そうなんだろうけどな……」


はぁ、とため息をついて、ダイモンが肩を落とした。

まぁ、普通に300体の魔物に囲まれるなんていう経験はそうしたくないだろうな。

俺もできればしたくなかった。


『むぅ……わしはどうしてもの時しか手伝わないのじゃ』

「はいはい……」


俺たちは話しながら、通路を進んでゆく。



――――――


それから階段を3つ下った。

ここは迷宮19層。

そして、俺たちの目の前に。


「やっぱり、このパターンな」


ふわふわと、輝く白い球が浮かんでいた。


「なんだ? これ」


ダイモンが恐る恐るといった感じで、球に触れようとする。


「ちょっとまった!」

「な、なんだっ!?」


慌てて手を引っ込めるダイモン。


「これに触れるとボス部屋に飛ばされるんだ。準備してからにしよう」

「お、ああ……すまない」

「いや、先に言わなかった俺が悪い。……よし、と」


籠手ガントレットを嵌め、戦闘態勢に入る俺。

ロックとダイモンも、肩から銃を降ろし『装填ローディング』と呟いて、弾丸の装填を完了させた。


「基本的には俺が戦う。敵の数が多い場合は……そうだな。ロックに援護を頼む。ミリィとダイモンは自衛に集中してくれ」

「わかったなの」

「了解だ」

「アリスも……数が多かったら手伝ってね?」

『どうしてもの時はの』

「よし、じゃあ触れるぞ」


腕を伸ばし、光球に触れた。

瞬間、目を開けていられないほどの閃光が暗い迷宮の通路を覆いつくした――


――――――



一瞬の浮遊感。

そして、地に足が着く感覚。

目を開ける。


「……なんだ、ここ」


気付くと、霧の中に立っていた。

ごつごつとした岩の感覚が、足の裏から伝わってくる。

上を見上げると、一面の青空。

太陽が、近い。


「山の、上か?」

「みてぇだな」

「空気が薄いなのー……」


随分と高い山の上に転送されたらしい。

霧に遮られて、下界の様子は伺い知れない。

いや、迷宮の中なんだろうけど。

前も思ったけど、どうやってこんな場所を迷宮の中に作ってるんだ。


――グルルルル……――


「……なんだ、この音?」


俺の耳に、小さな唸り声のようなものが届いた。

『遠見』を放つ。


遥か上空に、とんでもない魔力の反応。

その反応が、どんどん、こちらに向かって下ってくる――。


「何か来るぞ!」


日の光が眩しい。

肉眼でその存在を捉えられない――。


『……! レイジ!』


珍しくアリスが切羽詰まったような声を発する。


それと同時に、上空の魔力の反応が、さらに大きく膨れ上がる――。


「――!! みんな、伏せろォ!!」


怒鳴り、籠手ガントレットを嵌めた腕を交差させ、その悪寒に向けて構える。

直後。


――ゴァアアアアアッッ!!


咆哮、閃光、衝撃。

上空の何かから、魔力の塊が、俺に向かって照射された。

真正面から、その魔力の塊を籠手ガントレットで受け止める。

凄まじい圧力と熱が、踏ん張った脚ごと、俺の体をじりじりと後ろに下がらせる。

アリス製の籠手ガントレットが、ギャリギャリと音をたて、黒い魔力の粒となって削れてゆく。

俺にぶつかって弾かれ、辺りにまき散らされた魔力の熱量が、俺の生身の部分を焼き焦がした。


『ブレスじゃ! 聖力が混じっておる! あまり長くは止められぬぞ!』


言いながら、俺の影から飛び出るアリス。


「ちっ……魔力が使えぬ中、どこまで出来るかわからぬが……!」


ぐるん、と両手で握った紅い槍を回転させて、魔力の塊に向け振りぬくアリス。

甲高い音が辺りに響き、俺の全身にかかっていた圧力が無くなった。

どうやらアリスが何かをしたらしい。


「く……ぅ!」


膝をつき、呻く。

そこらじゅうを火傷してる。

傷の治りが遅い。

じくじくとした痛みが全身を苛み、立っていられない。


「レイジ!」


俺の背後、大きな岩陰に隠れていたダイモンが上空を指さして、切羽詰まった声を上げた。


「おいおい! ありゃ……!」

「レイジ! 呆けている場合じゃないのじゃ! しっかり立つのじゃ! 戦わねば死ぬのじゃ!」

「……ぐ、く……なん、だ……?」

「うそ……あれ……」


ミリィの声に、絶望の色が混じる。


皆の注視している先を、見上げる――


――はたして、ソレはそこにいた。


遥か上空からこちらを睥睨する、大きな影。

その全長は遥か上空に在って、なお大きい。

大きな翼を堂々と広げ滞空している。


雄々しくも、どこか美しささえ感じさせるその姿。


知っている。俺はあの魔物を知っている。


見たことは無い。

だが、知っている。


あらゆる御伽噺で語られ、その暴威を人々の心に刻むその存在。


時に恐れられ、時に人と共にあり、時に敬われ崇められるその存在。


強さの具現。

強者の象徴。


理知的な瞳が、俺たちを睥睨する。


「――ドラ……ゴン……」


それは、誰の呟きか。


空の王(ドラゴン)が、堂々たる姿を以って、そこに、居た。

ドラゴンの登場です。


明日も20時に一話投稿します。

気に入っていただけましたら、評価やブックマーク、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。