第1審
被告人は壇上へ。
裁判長の冷酷な言葉が法廷に響く。鎖につながれた少女は鞭を撃たれ、ゆっくりと壇上に歩き出した。
「被告、ドロシア・ニルンの魔女裁判を開始する。法律に基づき陪審員の多数決により判決を決定する」
「…どうせ有罪なくせに」
「被告、何か申されましたか?」
「…別に」
「そうですか。不利になる発言はしないことをお勧めしますよ。では開廷」
木槌が二回叩かれ、裁判が始まる。審問官が罪状を読み上げる。
罪状は第1級魔女法違反、第2級撲滅法違反。1人目の証言者はドロシアが火炎魔法を使用し、街道沿いの木の蜂の巣を燃やしていたと証言している。2人目の証言者は、彼女の家から紫色の見たこともない煙が立ち上っていたと言う。最後の証言者は、夜中に彼女とすれ違ったが、ランタンも持たないのに周りが明るく照らされていたと証言した。
弁護人は国が勝手に用意した面識も、事前打ち合わせもない知らない人だ。弁護人はドロシアが魔女として成熟しておらず、見習い程度なので第2級撲滅法には抵触しない。と弁護した。確かに見習いであれば定食はしないのだが、根本的な”魔女ではない”という弁護は一切ない。第1級魔女法違反の時点で有罪が確定すれば死刑だというのに、あたかも完璧な弁護であると言わんばかりに弁護人は胸を張っている。
ドロシアの証言の時間が回ってきた。証人の証言に対して、有力な証拠があれば肯定否定ができる。ドロシアはまず、街道沿いの蜂の巣駆除に関して、可燃性液体を巣にかけてマッチを投げたと釈明した。続いて紫色の煙が上がる様な物が無いことを家宅捜索の際に発見されていないことを証拠として挙げた。最後の証言に関しては、そもそも面識がなく、そんな時間に人とすれ違った事が無いと弁明した。
最後の弁明に対して裁判長は具体的な証拠が無いとしつつも、考慮点であると判断を下した。ここからは陪審員の投票になる。陪審員は一度別室で話し合ってから法廷に戻り、判決の投票用紙を裁判長に渡した。陪審員は7人、決して票は同数にならない。そして国内全土に撒かれた魔女戦犯の新聞は想像をはるかに上回る効果を持っていた。
「判決を言い渡す。主文、被告ドロシア・ニルンは第1級魔女法違反によりこれを有罪とする。続いて第2級撲滅法に関して、抵触しないものとし、よって無罪とする。判決は有罪1件、無罪1件。刑は死刑とする。執行日は本日15時とする。なにか被告は述べる権利があるが、何か言うか?」
「やっぱり有罪なんじゃん」
「それだけですか?」
ドロシアは黙って下を向く。沈黙を持って肯定を示した。
「ではこれにて閉廷!」
カンカン! と、木槌が振り下ろされた。
死刑執行は刑場で、尚且つ民衆の目の前で行われる。
「魔女を殺せ!」
「魔女を許すな!」
など、魔女への憎悪がこもった罵声が投げられる。石など物理的な投擲物も飛んでくる。ドロシアはギロチンに固定され、執行の時間を待つ。石やトマトなどが飛んできて顔に当たる。角ばった石のせいで出血するが、今から行われる刑に比べたら比にならないだろう。
「執行時間になったため、魔女ドロシア・ニルンの死刑を執行する」
執行官はギロチンを作動させる。重力によって加速する刃は魔女の首を斬り落とした。ギロチンの上をころころと転がる首を見た観衆は、歓声を上げる。首を斬られた体は、ビクンビクンとしていたが執行官が直剣を背中から心臓めがけて突き下ろした。
ザクっと骨と筋肉を断ち切り、心臓を貫通して刑場の足場に刺さる。ひときわビクンと跳ねあがった後、ドロシアの死体は動かなくなった。




