表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/88

#86 彼女の誠の名

 あと少し。


 もう少しーー…。


 ◆


 兎の頭を被った少年の正体は。

「私ーいや、ボクは江頭凛だよ。父さん」

 因幡真白を偽名とする、江頭保の子供だった。


 ガタガター…。

「っつ!」

 あの江頭が震えている。

「…出口ちゃん! どぉして言ってくれなかったのよ…」


 っずー…っずー…。

 肘を使い、椅子の方へと向かっていた、入江が止まる。

「何で、子供のことを教えなかったってこと、か?」

 そして、また動き出す。

「なぁ、引っ張ってよ!」

 小林と五十嵐に引っ張ってもらい、椅子へと腰かけた。

「教えてって言わなかったし、聞かなかったじゃあないか」

 口許を吊り上げ、

「ざまァ、ねェな~~ァ!」

 入江は嗤った。


 今の持ち札はーー最強に近かった。

 今のーー…ところだが。


「その鼻、へし折ってやろうかァ?? 出口ィ~~??」


 江頭の眼光が鈍く光った。

「そうですよ、父さん。聞かなかったことが全てでしょう」

「!? 父さん、父さん! 言うんじゃあねぇよ?!」

 少し、言いよどむ。

「手前が、あの禿に入り知恵しやがった奴だな??」

「はい。そうですよ、父さん」

「いい加減にしろよ!」


 凛が宙に手を添えた。


 すると、カードが切られていく。

 ポーカーのように。


「ねぇ、父さん。ゲームを始めましょうよ」

「……」

 江頭が無言で宙に、そのカードに指を添えた。

「鼻っから、こっちもそんつもりさ。クソ餓鬼が」

「でしょう、ね」


 江頭と凛が、身長差があるもーー睨み合う。

 笑みも浮かべている。


「でも。その前にーー貴方たちの力を削ぎます」

 

 その言葉に、江頭が身構える。

「出口さん! 名前を! あの魔女の、名前を‼」

 江頭が目を大きくさせた。

「止めーー…」

 そしてー手を大きく伸ばした。



「エリオット」




 ◆


『出口さん、この映画の内容は忘れないで下さいよ』

「知るかってんだよ」

『とても、重要な、重要なものですよ』

「だから、知るかってんだよ」


 観たくもないのに、観せられた映画。

 それは魔女・エリオットの物語。


「…なァ、どうしてこの魔女、主任と同じ顔してんだよ」

 入江が目を細めた。

「…なァ、どうしてこの魔女の声、主任と同じなんだよ」

 入江が目を閉じた。

「…なァ、どうしてお前の匂いは、おっさんと同じなんだよ」

 入江が顔を上げ、少年を見た。

 そして、兎の頭に触れた。


 カポ。


「それはーもう少し、後のお楽しみってことで」

「お゛、手前は…--」


 ◆


 真っ白な空間に立っていた。

 

 小林と絵里だけが。

「…--絵里ちゃん」

「可愛いりっちゃん」

 他の邪魔者は居ない。


「「元々、一人だった」」


 二人の声が重なる。

 そして、手をーー合わせた。


「どうして、離れたのさ。僕から」

「別々になっちゃったからだよ。りっちゃん」


 ギュ!


 指を握り合わせる。

「だから、元に戻りたいの」

「…元に何か、戻れるわけがないじゃないか」

「戻れるよ」


 パッ!


「もう僕は君なんかじゃない! 小林理生人だ!」

「それは赦さないよ、りっちゃん」

「許すも許さないもない! 僕は僕だ!」


 真っ白な空間が、歪んでいく。


「じゃあ、ゲームをしょうじゃない」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ