#85 父と子
どんでん返し。
衝撃の局面。
◆
そこは《御霊特急》なる輪廻転生便。
場所は《連鎖の揺り籠》なる絶対領域。
「手前も、江頭も、絶対ェに許さねェ‼」
肘をつき、起き上がる。
腰には力が入らない。
と、いう以前に感覚がない。
「よぅも、その体勢で、そのような口が叩けるものじゃな~~大嫌いな小林の後輩」
妾がほくそくむ。
「ボクもそうですね、と頷く」
クラリスも嗤う。
スーー…。
絵里が手を上げた。
それに妾とクラリスが押し黙る。
「では、どうする?」
「ぶっ殺すに決まってんだろう?!」
噛みつくように言い返す。
「どう、やってなの?」
「それは、こっから考えんだよ‼」
「っそ」
小さくため息を漏らす。
「でもね。もう可愛くない出口ちゃんに、用はないんだよね。本当に」
手を向けると、そこには小林と同じ杖があった。
「私は魔女! さぁ、恐れなさい‼」
正真正銘の魔女。
入江はきょとんとしていた。
「…何? 何で、そんな平然としていられるの?? 出口ちゃん!」
「へ? 何でって…何でかなァ~~」
入江が苦笑する。
顔は小林だが、入江には見覚えがあった。
確か。
あの兎頭ー因幡真白と観た映画の中に居た。
「アンタは《絵里ちゃん》なんかじゃあねェ」
ぎくん。
絵里の身体が揺らぐ。
「!? っな??」
顔も驚きの色が濃くなる。
「…し、っているとか、ぅそ、でしょぉ~~??」
たじろぐ様子だ。
『そう。貴女は絵里などではない』
続いた声に、入江の頭が垂れた。
「おっせ~~んじゃァねェ~~のォ??」
『おやおや。私をお待ちでしたか』
「少しな! ちょびっとだけな‼」
『そんな格好になっても、本当に威勢がいいですね~~』
「うっせ~~よ!」
そうギャンギャンと言い合う様子に。
「そやつは何じゃ。大嫌いなこ…出口よ!」
妾が絵里の前に、立ちふさがる」。
「ああ? こっちが聞きてェっつ~~の! ったく」
『ああ。ご挨拶が遅れましたが、私は因幡真白なる異業種』
絵里の表情も、元の勝気なものに戻っていた。
江頭が、怪訝な顔で煙草を咥えた。
カチチー…カチチー…。
手が震え、ライターの火が点けられない。
『ま。偽名なんですけど』
「だろうな」
速攻で入江が言い返した。
「だって、手前の匂いは…おっさんのと同じだ」
カッターーーン…!
江頭がライターを落とした。
「おっさんが人間じゃないとか、平子は対の人間だとかわけ分かんねェこと、うだうだ、言ってたの思い出したんだ」
落ちたライターを江頭は拾わず、手だけが震えていた。
「手前は平子の子宮と、おっさんの精子を媒介にした…子供だ」
カポ。
「--…ですねー」
江頭のように吊り上がった瞳、平子と同じく猫毛で色素の薄い髪。
少年の正体の《謎》が解けた。
「私ーーボクは江頭凛だよー父さん」
ギュ!
江頭は強く目を閉じた。
口許はワナワナと震え、咥えていた煙草も落っこちてしまった。




