#83 魔女生誕
必要だから貰うのよ。
欲しいから奪うんだよ。
◆
入江の中に引っ越した彼女が、
「『ああ、やってしまえ』」
入江の口から、そう指示をする。
バク!
「…は、ぁ?? 絵里…???」
思わず、入りも聞き返してしまう。
聞き間違いで合って欲しいとさえ思った。
「ど、ゆぅ、こと、だ…ょ」
だから。
何度も、聞き返してしまう。
「どうゆ、ぅ…こと、なんだ、ょ」
「『どもこうもない。言葉のまま』」
「損意味が分かんねぇっつってんだっつ~~の…」
「『可愛くない出口ちゃん』」
低い声だった。
同時に、江頭も肩を強く踏み込んだ。
「! ぁ、だッッ! え、がしら、さ…ーーぅ゛」
ギリ!
入江は江頭を睨んだ。
「手前なんか、大っ嫌いだ!」
口許もワナワナと震える。
「大嫌い、か…」
江頭の眉毛が下がる。
「そぅ、か…」
そう声を漏らすと、江頭は足元を強く踏み込んだ。
ドンッッ‼
「ま。そうなるんは、仕方ないわな」
手の先の拡げた。
「うん。しゃ~~ないわな」
パシーー…!
影から何かが飛び出して来た。
それを何食わぬ顔をして掴んだ。
「俺ぁ、偽りなんかないんだぜ、出口ちゃん」
ジョッキン!
手の中には、銀色の大きなハサミが握られていた。
そのハサミを、大きく拡げる。
「お前もそうだろう? 本気で、俺んことーー」
その問いかけに、入江の身体が震えた。
「お、俺、は…ずーー…ズルイよ、ズルイよ、ズルイよ!」
入江が咽び泣く。
「こんなときにッ! そんなこと言うんじゃあねェよ‼」
涙腺が崩壊した。
「『くだらない話しはそこまでよ、江頭君』」
そのやり取りを絵里はくだらないと吐き捨てた。
「『早く、やっちゃってよ』」
「そう、ですね」
苦笑交じりに頷く、と。
「ってこった! 悪ィなッ‼ 出口ちゃん‼」
「江頭、さ、んーー…」
振りかざしたハサミは、入江の頭の横に刺さった。
髪が少し切れ、落ちていく。
「!?」
ググググーー…ハサミの先が、地面に、入江の影に突き刺されていく。
「お前の身体を貰うんだよ」
「か、ら…だ??」
言っている、その意味が分からない。
「『そぉだよ、可愛くない出口ちゃん』」
また言葉が吐き出される。
入江は混乱する。
その様子を見ることしか出来ない、小林と五十嵐。
手出しが出来ない。
入江が捕まっている限り。
ザクー…ザクーー…。
「う゛、ぁだだ!?」
ハサミが深く影に差し込まれる度に、入江の身体に激痛が奔る。
「痛いのは、すぐ済む」
足は肩を踏みしめたままだ。
「じゃあ、最後の仕上げだ」
ジョキン‼‼
「 --~~~ッッ‼‼」
言葉にならない叫びが、口から迸った。
視界も霞んでいく。
その中で。
◆
江頭さんの手…だ。
「よ、っとーー」
何、何を、してんの?
俺の顔の横に腕を伸ばしてる。
身体が、上手く動かねェ…。
「やっぱ、いいわね。肉体ってのは」
声、だ。
聞き覚えがある声がすんな。
誰、だっけかな?
「そりゃあ、そうでしょうよ。絵里様」
あれ? 江頭さんの手に誰かの手が添えられてる。
俺は、目を向けた。
頭も、どうにかして横に向けることも出来た。
でも、身体全体は、どうにも動かない。
激痛がする。とくに腰のあたりだ。
「!? ぁ゛…お゛、俺…お゛、俺??」
出て来たものと目がかち合う。
「ふはは! 貰うよ、身体」
声はーー絵里だった。
ただ、その容姿は、目を疑いたくもなる。
自分ーー入江出口、そのものだったからだ。




