#82 ラスボス
初めから、君に決めていた。
◆
チョッキン。
江頭が、指をはさみの形にして、そう言って動かす。
「切る…? 一体、何の話しをしてるんだ!」
そう小林が言い返す。
「ははは! 言葉のまんまだぜぇ~~?? 小林ちゃん」
床に転がした入江の肩を踏む。
「あ゛っ…っだァーーッ!?」
踏まれた肩に、入江も苦痛の声を漏らした。
「ははは! いい声だなァ~~、出口ぃ~~!」
江頭が舌なめずりをする。
「へ、変っっ態ッッ‼」
思いっきり、入江が睨む。
「その屈しないって目が、俺ぁ、好きだぜ?」
「そいつァ~~どうもッッ‼」
ガリ!
入江は、江頭の足を掴み、爪で引っ掻いた。
「あたた、痛いじゃねぇかよ…おら」
バシ!
肩に乗せていた足で入江の頬を蹴飛ばす。
「うぐ!」
床に頭を打ちつけてしまい、入江の口からは、くぐもった声が漏れる。
その衝撃音は鈍かった。
「「入江ッッ‼」」
小林と五十嵐が小さく叫んだ。
「うるせぇ」
その二人に、江頭が低く言い捨てた。
「「‼」」
ゴクリーー…。
江頭の凄みに息を飲み込んだ。
そんな光景に、
「もうよいぞ、話しを進めい。お主も」
妾が、飽きたように言い放つ。
「つまんないの? お前さん」
「うむ、つまらぬな」
「タモツ、主様への口の利き方に気をつけろと、ボクは言う」
クラリスのもの言いに、
「はいはい」
江頭が肩を上げて、返事をする。
「ったく、アチラは何を考えて…」
ブツブツ、とクラリスが文句を垂れるつつ、頬を膨らませる。
そんなクラリスの頭を、妾が、優しく撫でた。
「!? あ、ぁ、あ……あああ、主ささささ様‼」
クラリスの鉄仮面が崩れ、真っ赤な表情となった。
「ふぇ~~可愛い連れだねい」
「ああ。であろう?」
撫で撫で。
「 ~~~~……!」
クラリスは昇天寸前といった具合に、恍惚の表情となっていた。
目はハートにもなっている。
「…で、話しを戻すぞ~~」
江頭が真顔に戻る。
「ああ。そうだな、寸劇なんかに興味なんかない」
小林が口端の血を拭き取る仕草をする。
「いいから、出口を離せ! 江頭主任!」
蹲る入江を、上から見下ろす。
そして、口端が吊り上げられる。
「身体、がいんのよ。身体が、さっき言ったろ?」
入江も咳き込みながら。
「か、ら、だ…? 身体が??」
「おう。そう、身体だよ、入江ちゃん」
そして、また江頭は入江の肩を踏みつけ、正面へと向けた。
「健康な、怒りしかない人間の、身体がな? つ~~か、さっき言ったろうが!」
声が荒ぶる、も。
すぐに、ふふふ、とにこやかな表情となる。
「じゃあ、ま。ちゃっちゃっと、やっちゃいましょうか?」
その誰へと問いとも取れない江頭の言葉に。
「『ああ、やってしまえ』」
入江の口から、誰とも分からないーーいや、彼女の声が出た。




