#81 語られる、何か
恐ろしい計画。
打開、不可能戦。
◆
始まりは、何とやら。
他愛もないものから、壮大なものの、ピンからキリまで。
絵里の存在も、その類の一つだった。
マジョハ、シナナイ。
そう入江越しに言ったように。
シトハ、エンモナイ。
それも教えた。
「魔女が死なないのは、産みの親からの超遺伝子だ」
江頭が入江の腕を掴んだまま言う。
「だが、心はーー心までは遺伝しない個々のもつモノ」
「離せよ!」
ガクガク!
もがく入江を無視し、進める。
「肉体も同様に、長い年月における、人間との交配により、超遺伝子にも穴が産まれる」
「絵里ちゃんと何の関係があるんだよ」
小林が睨む。
「絵里ちゃんには関係がない。
「お馬鹿さんだねぇ~~お前さんは~~」
小馬鹿にした言い方をする。
「何で、そこで関係がないって言いきれんのかねぇ~~」
ッチャ!
小林が杖を構えた。
「じゃあ、直に言おっか!?」
にこやかに、江頭が微笑んだ。
「全部、お前のせいなんだよ、小林理生人」
「っはァ?? 言ってる意味が分かんないんだけど??」
「いまさら、逃げんなよ」
「逃げてるつもりはない」
バチバチ‼
小林と江頭の間に火花が散る。
「絵里は、魔女だった頃の名前の名残をお前さんが知っていた」
小林の目尻が吊り上がる。
「だから、そう名付けちまったのさ! 『絵里』とな!」
「いい加減なことばっかり言われるのは…ッッ!」
ッザ!
小林が腰を上げ、
「《心臓破裂》!」
そう呪文を唱える。
杖からは禍々しい閃光が迸った。
ただ。
この呪文はまだ、彼にはーー小林には早過ぎた。
「っが、っはーー…ッッ!」
唱え終えると同時に、小林は口から大量に吐血した。
「いきなりそんなの使おうとすっからだぞ。馬鹿たれが」
放たれた閃光が、江頭の手のひらの中で、踊るように揺れる。
「ま、これでお前は自身の、正体がーーもう分かったよな?」
ム。
「僕は…ッッ」
ムム。
「…小林、主任?」
ムムム。
「小林サン??」
ムムム!
「僕はーー絵里ちゃんとは、同一人物だった 魂の片割れ」
パチパチ‼
「そう。元は同じ魂だったわけだ」
「違う! あのおっさんは、そんな大そうなもんじゃねェ!」
大声で入江が叫んだ。
「と、思うだろう? でも、全部、現実なんだわ」
「そうじゃ、妾もーーそのために、ずっと居ったのじゃ」
妾が頷く。
入江が涙目で、妾と江頭を交互に睨んだ。
「だが、大嫌いな小林の中だけでもどうにもならん。その器にはならぬ」
ぱ!
江頭が、入江から手を離した。
すると、入江の身体は簡単に、床に落ちてしまう。
ヴォンーー…!
「…はァ゛??」
入江の身体を魔法陣が囲んだ。
様々な色に、光る。
「膨大な怒り、健康な身体ーーその全てが、お前に当てはまったってわけだ」
江頭が見下ろし、吐き捨てる。
「江頭、主任…おっさんーー…!」
っだ!
「いい加減に!」
言葉より先に、五十嵐が短剣を奔らせた。
「しろってんだよ‼」
「話しが進まないじゃねぇ~~かぁ、五十嵐チーフさんよぉ~~?!」
ぶお!
「お゛お゛お゛ォ゛ォ゛‼」
五十嵐は江頭により吹き飛ばされた、椅子の上へと腰を下ろす恰好となった。
「ちっく、しょう~~‼」
「いいから、おとなしくしてろよな」
小林が唇を噛み締めた。
「…入江を、どう調理するつもりだ!」
「え?」
江頭は、手でハサミの形にした。
「切るんだよ」




