#74 準備はいいかい?
今から始まる。
戦火の鼓動。
◆
タカタカーーふぁあ!
「…パーティからメジロが外れるか」
少し、俯く入江に。
「『可愛くない出口ちゃん? 寂しいのかな?』」
「あー~~うん、どうかなぁ~~」
俯いていた顔を正面に戻し、
「うんにゃ」
笑った。
「嬉しいよ!」
声も、小刻みに揺れている。
「メジロは仕事を選んだんだ。完全なるサポートを」
濡れた髪に触れる。
じっとりしている。
「だから。俺は、それに応える」
「『可愛くない出口ちゃん? 少し、背負い過ぎじゃなくて?』」
「背負う?? うんにゃ」
向かいから見覚えのある男が、歩いてきた。
「そうしたいからすんだよ」
兎の頭を被ったーー彼が。
そんな彼を確認すると。
入江は。
口を大きく開け、歯を見せて笑った。
◆
入江が居なくなってから、小林も、ただ、淡々と事務仕事をしていた。
「はぁ」
何度吐いたか分からない、ため息に。
「主任ー~~ちょっと、気が散ります!」
端の机のPCをいじっていた関本七緒が言う。
彼もまた、小林にものおうじしない、稀少なスタッフだ。
そしてーー小林のお気に入りでもあり。
少しずつではあったが、発注なども教えてもらっていた。
「何ですか?? また、何か入江の奴に言って怒らせたとか? 傷つけたとか、そんなところですか??」
小林が入江にぞっこんと知っていいるため、そう聞けるのも、この関本だけだった。
「僕がそんな真似出来るとでも、思ってんのかな? 関本君は」
「いや! ないですね~~入江の奴に嫌われたら、きっとため息どころじゃないでしょ??」
「…--はぁ」
カタ、カタタター…--。
「小林サーーーーン!」
バッターーーン‼
ノックもなく、五十嵐が入室して来た。
それに。
「メダルのチーフが、そんなに暇してて、怒られちゃいますよ? 布袋さんに」
「布袋は休みだ! だから、怒られないんです~~!」
得意にも、ドヤ顔で言い放つ。
しかし。
「さっき、どっかに行ったとかでお土産届けに来たんで、今、店には居ますかんね??」
ガタ。
「ぇ、い、んの??」
ガタガターー…。
「さて、と」
震える五十嵐を他所に、小林が立ち上がった。
「? え、どこに行くんスか、小林さん??」
仏頂面で五十嵐を見る。
「一周してから、帰ろうと言うところですが、何か??」
五十嵐の目が点となる。
時刻はすでに、深夜のてっぺんになろうとしていた。




