#70 裸の相棒
それが、君と俺の生きる道。
◆
「逞しい身体だべ」
「あっそ。うんなことよか、お湯に浸かろうぜ」
そう素っ気なく言うと、背中のメジロを剥がした。
ザボン!
「あ~~いい湯だな、こりゃあァ」
メジロ、ガン無視。
わなわな。
「め、メジロ~~よよよ、嫁入り前なんだから、混浴はよくないよ~~」
伍朗が、メジロに女湯に行くように、促す。
「っはァー~~」
入江はマイペースだった。
そこには女なんて居ないとばかりに。
「おお~~男の身体は本当に久しぶり~~」
ペタペタ、と足や腕。
平らな胸に指で触れていく。
「~~出口‼」
メジロが大きく入江の名前を呼ぶ。
ビクリ。
「あんだよ。ったく…」
入江はムスくれる。
「おらに魅力は感じねぇんだが??」
じろー~~ジロ、ジロ…。
入江はメジロの頭から、つま先を見た。
そして、首をひねる。
「色気、ゼロじゃね?」
少し、微笑む。
メジロが、初めて見る男の入江のーー笑顔。
カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ!
頬が朱に染まる。
じわ、ジワー~~…。
メジロの目に涙が溜まっていく。
「そこが面倒なんだよ、女ってのは」
すいー~~。
入江はお湯の中を泳ぐ。
「でも。いいのかなァ??」
バシャ!
「出口…?」
お湯から勢いよく上がり、メジロと見つめ合う。
「女だって見たら、俺、もう、傍には居ないぜ? 女は苦手なんだわ」
「…男がスーー」
「ねェ~~よ! 馬鹿‼」
入江は叫ぶと、メジロの頭にチョップする。
そして。
メジロの口に指を差し込み、口許を大きく上げさせた。
「ん、でも。お前のことは嫌いじゃあねェんだぜ? メジロちゃん?」
ふが、ふご。
「それじゃ、お嫌なのゥ?」
ふるふるー…。
「俺ちゃあ~~相棒だろう? 色恋沙汰なんざ邪魔じゃねェのよ」
こくー…コウコク…。
メジロは納得のいかない色の表情をしている。
伍朗は複雑な表情をしている。
「おれは、その姿の方が…ス、好きだだだ、だべ…」
ギロリー…メジロが伍朗を睨む。
「っひぃ!」
バシャ、バシャ!
(今は、それでもいいべ、今はー…)
ニコリ。
「お。分かってくれたかい」
指を抜く。
「もう。あでなこと言わないべ」
「おう。そうしとけ」
バサ!
サラサラー…!
「げ!?」
怒りが胸に支配する。
また、入江は女の恰好となってしまう。
「あ゛あ゛~~も゛う゛っ!」
柔らかい肌に、膨らんだ胸。
華奢な身体。
ばっしゃー~~ん!
「信じらんねェ!」
ふと。
メジロは思った。
自身や、兄の呪いが解けたこの世界ならば、
(入江の呪いだって、解けてもーーいいはずではねぇべか??)
そう、頭に浮かんだ。
解けていない、呪い。
(きっと、意味があるんだべ、さ)
それが、このへんてこな事変の正体ではないかとも思った。
入江に、その意味があるのだと。




