#69 裸の付き合い
止まらない秒針。
動き出す運命。
◆
ちゃぽん。
「のぼせそう~~」
入江がお湯に浸る。
「で。お前はどうするべさ」
「…どうって何か分かんないな~~ぷぷぷ!」
入江はメジロをからかう。
「話しをはぐらかすんじゃあねぇべ!」
◆
どうも、こうもねェんだよ。
メジロ。
「はぐらかしてなんかねェし」
俺は、お前たちや、みんなを護りてェだけなんだ。
そして。
取り戻してェんだよ。
好きな男を。
「はぐらかす意味なんか分かんないなァ~~」
たとえ、何を失っても。
性別も変わっちまったことだしな!
◆
「そういや。メジロ、お前ーー」
「!? 何だべさ! またはぐらかす気なのか??」
「違ェ~~よ! お前、江頭のこと聞いて来ただろう?」
「「!?」」
伍朗とメジロの表情が青ざめる。
「ぇ、何、面白い顔してやがんだよ?!」
メジロの指が入江の背後を指した。
小刻みに震えている。
「あ゛?」
『よぉう。出口ぃ~~』
「! 江頭主任‼」
パァァァァ!
入江の表情が明るくなった。
同時に。
「あ」
男の身体に戻った。
『ははは! 怒りが消えちゃったねぇ』
いつも社会にキレている入江。
江頭のかけた呪いは、怒りを媒体としている。
そのため、怒りがなくなればーー戻るのだ。
お湯でリフレッシュしていた分。
一時的にだが、怒りが収まったといえよう。
『また、禿になちゃったか』
「…禿じゃあねェつってんだろうが!」
「『貴方の方が、薄いじゃないの。江頭君』」
絵里も、含みのある声を漏らした。
『うっせー~~よ! で。獣人の子供か、懐かしいんじゃないの?』
ガクガク!
「何? 知ってんのか??」
コクコクー…。
『当ったり前じゃあねかよ。呪いかけたの俺だし』
「ひでェな」
『こいつらの方が馬鹿なんだよ。ったく』
「解いてやれよな」
『解くも何も、この世界に連れて着てんだから呪い自体解けてんだっつ~~の』
「「ほ、本当だべ??」」
伍朗とメジロが聞き返す。
『俺は嘘はつく趣味なんかねぇよ。それに懲りたら、二度とあんな真似はしねぇこった!』
メジロと伍朗が抱き合う。
『ただー戻るとまた、ちょっと呪いじゃねえが、あの姿になっからな』
ぷは~~。
煙草を吸う姿の江頭を見つめていた。
『なぁ。出口ちゃん』
「!? ななな、何だよ!」
『こっち側に来ない?』
「…そっち、に?」
『うん。そー』
グラー…!
「駄目だべ! こいつはおらんだべ!」
勢いよく、後ろからメジロが抱き着く。
「め、メジロ…」
おっぱいが背中に当たる。
とても柔らかい。
男にはないものだ。
今の入江の身体にもない。
『お前の? ははは! それはねぇわ』
「『もうおよし、江頭君。君は少し、可愛くない出口ちゃんに夢中になり過ぎだよ』」
絵里はそう江頭に叱咤する。
『っち! 分かったよ‼ おい、出口‼』
ビクー…!
『こっちを選べ! いいな?! もう時期、選択を迫られる!』
台詞途中で江頭が消えていく。
「『煩いから飛ばしちゃったよ、可愛くない出口ちゃん』」
「あんたって、結構、ヒドいよな」
「『そうでもないよwwwww』」
そして。
絵里の気配も消えた。
残された沈黙。
「入江、お前、本当に男だったんだべな…」
「? 言っただろう?? 馬鹿か、お前は」
「禿になったべ」
「!? 禿じゃあねェっつ~~の‼」
裸で向き合う。
ごく自然に。




