#68 ため息がいっぱい
溢れ出るため息。
滲み出る殺意。
◆
「何だよ。メジロ、気色 悪ィなァ~~」
ムス。
入江がしかめっ面になる。
「お前は、犠牲になるつもりだべさ」
ギク!
「誰のために犠牲になるつもりだべ」
「…そんな、誰とはねェし!」
バッシャ!
勢いよく入江はお湯から上がろうとするも。
「まだ! 話しは終わってねぇべ‼」
「何なんだよ! 急に!?」
「本当に…何、してんだべ。メジロぉ」
呆れた声が聞こえて来た。
それは。
「兄さ」
何故かセット扱いで来らせられてしまった伍朗が立ちすくんでいた。
「あ! ごごごご、ごめん! 入江ちゃんも居ったんだべか!?」
慌てて股間にタオルを巻きつけた。
「伍朗ちゃ~~ん! メジロがいじめるよォ~~う!」
甘えた声で、お湯から上がり、伍朗にひっつく。
全裸で。
「ああああああああッッ!」
熱気とは別に、伍朗の身体が真っ赤に染まる。
「兄さ! とっとと行くべさ‼」
そして、妹メジロもお湯から上がり、腕を大きく振った。
「ぅ、わぁ~~」
目を覆う。
一面のおっぱいだ。
「うぶだねェ~~伍朗ちゃんは~~ァ」
「兄さをたぶらかすんじゃあねぇべさ!」
ふるふる。
「も゛、や゛だ~~」
涙声の伍朗。
いや、泣いている。
さすがに可哀想になったのか。
「悪かった、伍朗ちゃん。さ、風呂入ろうぜ」
コクリ。
◆
「はぁ」
小林がため息を吐く。
頭が軽い。
空耳もー絵里の声も聞こえない。
「はぁ」
全部、入江に持ってかれた。
「はぁ」
「主任~~幸せ逃げまくり~~」
まぐまぐ。
事務所で弁当を食べている五十嵐が苦笑する。
「五十嵐君も、もう帰る時間でしょ」
「小林さんもでしょ」
カタカタタ。
「僕は、これから発注や、本社へのメールに業者に聞かなきゃいけないこともあるから電話してって、仕事が山積みなんですよ」
ワンブレスで言う。
「君みたく、僕は暇なんかじゃない」
っふ!
「「?!」」
『いいご身分だなぁ~~理生人ぉ~~』
カチー…ふぅ。
煙草を吸っていない事務所に煙草の煙が充満する。
「…五十嵐、主任です、か?」
たどたどしく小林が尋ねた。
『ははは! 他に誰が居んだよ』
シー…ン…。
「死ねばいいのに」
小林が吐き捨てた。
『拗ねてんじゃあねぇよ。子供じゃ、あるまいし』
「…入江君の中から、居なくなれよ」
『ははは! そいつぁ、出口ちゃんに言えっての』
「で。亡霊が何の用で?」
涼し気に五十嵐が江頭に聞く。
拳は小刻みに震えている。
「ただ。要件だけを口にしろ」
にっこり。
『おー~~怖っ。ったく、無粋な奴らしか居ねぇのかよ!』
ふぅー~~。
『時期、全部決まる』
すぅ。
『そんときゃ、お前に何が残るのか、今から愉しみだわ』
「そんなこと、言いに来たのか? 死ねよ、本当に」
『いいことも教えてやるよ』
「…何ですか?」
『他の男と出口が入浴してるよん?』
ガタタ!
っふー…。
事務所の灯りが点く。
「お、俺、ちょっと行って来ます」
「ぁ、うん」
ポスン。
「はぁ」




