#67 この胸の高鳴りを
その出会いは必要不可欠なもの。
その出会いが全ての人生を一変させる。
◆
「入江は居ねぇーー~~がァ゛!」
ノックもなくメジロが事務所に特攻して来る。
「月代さん、ノックしょうか」
冷静に小林が言う。
組み敷かれた入江は、ぽかん~~とした顔をしている。
「小林主任、その馬鹿、貰えるべか」
メジロが入江を指差す。
「いや、駄目」
「貰うべさ」
素っ気なく、そう言うとメジロは。
ぐいーー…!
入江の腕を引っ張り、小林の下から、引っ張り出した。
「おっと! の゛わ゛っ」
「ほら! とっとっと、出るべさ! ったく!」
入江の腕を掴むメジロの爪が、腕にめり込みーー痛い。
「おい。痛ェ~~よォ~~メジロちゃ~~ん」
入江は、メジロに腕を引っ張られる格好で事務所を後にした。
◆
ダダダダ!
「ね。メジロ、お前どうしたんだよ」
「どうしたって? 何がだべ!?」
「何、怒ってんの?」
「別に怒ってねぇべさ!」
横から見える顔は、真っ赤に染まっている。
入江は肩で息を吐く。
(女ってのは、よ分からんわ、本当に)
実際、入江は誰ともつき合ったことがないため、本当に理解出来ない。
(でも、ま、何だ…うん)
少し、胸が痛い。
「とっとと、帰るべさ!」
その言葉に、入江の引っ張られていた身体の足が止まっていく。
そして、徐々に重くなり、ついには動かなくなった。
「何したべ!」
メジロが振り返り入江を見た。
入江は真っ直ぐにメジロを見据えていた。
「俺は、まだ、帰れないんだよ」
◆
銀河エンタテインメント施設は五階建てである。
そして、地下にも部屋がある。
まず。
筆頭に景品倉庫がある。
さらに、銀河高校の地下歩道もある。
実習生は、ここから勤務に来るのだ。
歩くエスカレーターも完備されている。
それ以外のスタッフは地上からの出勤だ。
そして。
「あ゛ァ~~」
生徒、教育員並びに、勤務している従業員のための施設も完備されている。
疲れを癒すためとは名ばかりに。
この施設の建設時に、温泉が掘れて噴き出してしまった。
入浴は無料だ。
「いい湯だなァ」
「だべ」
男湯に女湯。
そして、謎の混浴湯もあった。
まさに、裸のつき合いと言うやつだ。
その混浴に仲良く浸かっている。
「メジロォ~~あのさー~~」
「何だべ」
「…後悔してるか? 俺も、テンション高くなってたし」
バッシャ!
「ま。だべな」
メジロが視線を泳がせた。
「でも」
「でも、何?」
くるくるーーメジロは自分の短い髪を指で巻く。
「お前と居るの愉しいべさ…」
「そ? ありがとさん」
にへ。
入江の顔が満面の笑顔になる。
「な。ところで、だべが」
「ん。あんだよ、改まってよォ」
「お前、男…何だべ?」
「あーメジロに会ったときから、俺ってばこんな恰好だもんな」
コクコク。
「で、だべ。おらと一緒に風呂に入ってーー興奮とかしないんだべかな?」
裸のつき合い、なのだ。
「悪いけど、俺。女に興味ないっつ~~か、持てないっつ~~ぅか」
ガリガリ! と頭を掻く。
「あ! おおおお、俺っは! あっちでもねェかんな?!」
入江も慌てて釈明する。
「じゃあ、どうすれば、おらはお前を興奮させられるんだべ?」
言われた言葉に、入江が止まる。
「っはァ?? メジロォ~~?? 頭、大丈夫かァ??」
入江はメジロの額にひっついた髪を上げる。
そして、メジロの目の前で苦笑した。
キュン。
(主任とも違う。この胸の高鳴りは何だべ)
「メジロってば、まだ記憶が追いついてないんだなァ~~」
(いや、おらーーこの疼きは知っているべ)
最初の出会いはー最悪。
でも、気がつけば。
気になっていた人間よりもーー気になって。
振り回されることさえも愉しくなって来た。
(こいつを、どうやったらーーおらのものになるべかなぁ)
だからなのか。
ほっとけないし。
自分以外の誰かが、横に居ることに怒りを覚える。
「メジロォ??」
様子のおかしいメジロに、入江が首を傾げる。
ゴクリーー……。




