表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/88

#66 社畜の退勤時刻

 終わらせなきゃって思うほどにね。

 おかしな話でさ。

 続けばいいなって思ってしまうもんなんだ。


 ◆


 無常にもタイムアップとなってしまう。

 そう。

 入江出口の勤務終了の6時半過ぎ。


「あ、おはよう! 入江さん」

 遅番の関本七緒がカウンターに居た入江に手を上げる。

 それに。

「あ! …おはよう、関本君」

 入江も、焦り始めている。


 それから、早番であったことを引き継ぐのだが。


(さすがに、RPG物語はいいよな? 引き継ぎとは言え)


「あ。今日、なんか予約景品とか、早々。銀河のオリジナル商品も、確か、今日来るはずなんだけど来てるかな??」

「! ゃ、来てるとは聞いてねェよ。軽部さんからは」

「おっかしぃー~~なぁ?! 本当なら昨日来るはずのなのに!」

 関本が発狂する。

「よし! ごめん、ちょっと本社の景品担当に確認して来てもいいかな? その間、フロアーもお願い出来る??」


「‼ あ、ああ! それぐれェ~~構わねェ~~っての!」

「さすが! 入江さんっ、じゃあ行って来るわ!」

「はいはい!」


 ひらひら。


 稼げる時間も限られている。

「来るなら、とっとと来いようなァーー~~~~ッッ‼」

 カウンターで低い声で叫んでしまう。


 そして間合いも悪く。


「あああ、あの、その…けけけ、景ひひひ、んのいいいい位置ななな‼」


 一般のお客が来てしまい、泣かせてしまう。

 あ゛~~と天を仰ぐ。

「大変申し訳ありません、お客様!」

 すぐに営業スマイルをした。

 なかったことにしょうとした。


 ◆


「じゃあ、上がっていいよ」

 そう小林に素っ気なく言われた。

 タイムカードを切りに事務所に行ったときに。


「はァ?!」


 思わず入江も聞き返してしまう。

「何でだよ‼」

「何でも何も、君ーー勤務上がりでしょ」

 ぐぅの音も出ない。

 出させて貰えない。


「お、俺が帰ったら、アンタら死ぬよ?! 絶対に」

「そりゃあ、死ぬときは死ぬでしょ。はいはい、お疲れ様」

 立ちすくんでいた入江の背中を小林が押す。

 事務所の扉まで。

「お、おい! こ、っこ、主任‼」


 ビク!


 小林の背中を押す手が止まった。

「アンタ、俺が邪魔なの?! あんなに助けてやってんのに??」

 入江は勢いよく、振り向く。

 長い髪がキラキラと光る。


「?!」


 小林の顔が歪む。

「何なんだよ! そんな顔しやがって、意味分かんねェんだよ!?」

「だって…僕はー」

 小林は俯いてしまう。


「ー…君を、失いたくなんかないッッ‼」


 ポツリと本音を漏らす。

「っはァ?? お前は馬鹿なのか!?」

 入江は膝で軽く、小林の腹に当てた。


「なら。俺を護ってやるみたいな気持ちないの? アンタ」

「自信がないことなんか言えないし、出来ないことも出来るとも言い難い」

「お堅いこって」

 小林の両手が伸びる。


 そして、抱きしめられる。


 とてもキツく。


「僕の気持ち知ってて、そうからかうの? 君は」

 肩口に小林の顔が乗せられる。

「俺の気持ち知ってて、そんなこと告白すんの? あんたは」

 入江も苦笑交じりに言い返す。


 自分が好きなのは、あの おっさん

 それは確かな気持ちだ。


「そんなこと言うから、平子さんに睨まれるんじゃないの?」

「…あれ、どうにかしてくんねェかな?」

「他人の旦那に手を出すからでしょ。当然の報いだわ」

「手ー~~出されてんのー~~俺なんですけどォー~~??」


 ちゅ。


「額はいいでしょ。キスぐらい」

「…よかねェべ」


 バン!


「入江は居ねがぁー~~ッッ!?」

 大きく事務所の扉を、ノックせずに入って来た。


 月代メジロ、が。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ