#61 やさしいキスをして
感謝は金かーー。
それとも、たった一つの真心ーー…愛情なのか。
◆
問題は解決していない。
「で。こっからどうすりゃあいいんだよ」
入江が五十嵐に聞く。
「さぁ」
にこやかにいとも簡単に応える五十嵐。
「おい! 何の冗談だ、そりゃあー…」
入江も殺気立つ。
『あくまで彼はセーブポイントだもん。仕方ないよ』
絵里がそう含み笑いをした。
『可愛くない出口ちゃんは、帰りたいの?』
ガシガシー…。
絵里に頭を乱暴に撫でられる。
「あったりめェー~~だろォ~~が!」
入江も強く言い返した。
『ふぅ…ん』
余裕のある絵里の顔が、小林に見え、余計に腹が立つ。
「出来んならやれや!」
『本当に可愛くないね。出口ちゃんは』
「男が可愛い子ぶってどうすんだよ!」
『媚売ったほうがいいときもあるんだよ? 可愛くない出口ちゃん』
入江が顔を横に逸らした。
ご立腹なのか、腕を組み、頬を膨らませている。
(媚、ねェ…っふん!)
『今回はあたしの制御不足なことも否めないから、可愛くない出口ちゃんのお望みのままに、戻すよ』
ぐりぃん‼
「出来るんなら始めっからやれやっっ!?」
入江も突っ込む。
さすがにこの茶番も飽きた。
いや。
意味のない、この世界に嫌気がさした。
『これ、次の舞台で使ってよ』
ぽぽい!
「?! ォ、っとっと!」
人が居ない方に投げられたものを、入江も、思わず飛び、受け止めてしまう。
「おい! 投げんじゃあねェよ‼」
『それが必要になるから。あたしの可愛いりっちゃん、に』
手にあるものを見た。
「簪…ヘアピンがか??」
『うん。そう』
裏に表に見ても。
至って変哲のない簪だ。
『五十嵐君!』
絵里が五十嵐を呼ぶ、も。
「横にいますよ。絵里さん」
『ふふふ。ごめんごめん』
そして。
『《時空の門の番人よ! 迷い子を送られよ》!』
絵里が唱え始めた。
すると、どうだ。
「い、がらし…さん??」
五十嵐の胸に光の渦が出来ていた。
少し、苦痛の顔をしている。
「気に、すんな」
そうは言われても。
そうもいかない。
「ちゅう、してくれたら、痛くなくなるかもな~~」
シラーー…。
「…大丈夫そうだな」
次に五十嵐の影の真ん中が黒く渦を巻いていた。
「ォ、わ…」
SFのようなSG並の迫力があった。
『さ。お帰り、可愛くない出口ちゃん』
絵里が変わらない笑顔を向ける。
「…おうーー」
空恐ろしいものにも見えた。
(何で、あんなに普通なんだ?? 可笑しいだろう??)
絵里は何者なのか。
(主任なら、知ってーーる訳ねェわな…ったく!)
入江は自分を襲い、五十嵐の攻撃によって伸された小林を見た。
知っていれば、小林も絵里に何かと、あのの○太のように、彼女に頼るはずだ。
頼らなかった。
それが明白な答えだ。
(何者か分かんねェもんを飼ってたっつゥのが、一番)
ごくりー…。
『何かな? 可愛くない出口ちゃん』
顔を横に振る。
何もないよ、と。
『そ。じゃあ、影の中にー…ふふふ』
言われる前に入江も入る。
顔を上げると、
「可愛いくなっちゃって、本当に」
汗だくの表情をした五十嵐の顔があった。
「ははは。また、あっちで会おうな?」
撫でー…。
「へ??」
入江が、五十嵐の胸もと手をやると強く引っ張った。
チュ!
「!?」
入江の顔も茹でたこのようになっている。
でもすぐに、いつもの顔に戻り。
「あっちで会おうな! チーフ‼」
元の世界へと戻って行った。




