#56 両者引き分け、いや、むしろ負け
何度でも、奇跡は起こるよ。
何度でもーー悪夢を見せるてあげるよ…。
◆
ボチ!
「…ん…??」
ボチ、ボチ!
「っはァ゛??」
何も起こらない。
思わず、入江も何回も連打する。
初代ファミ○ンのコントローラのように。
高橋名人の、如く。
しかし、願い虚しく、《標識調》朽ちてしまう。
「あんだってぇ~~?? んな馬鹿なことあんのかよ‼」
入江も絶叫するほかない。
「『腐ってやがる! って感じ?』」
「短い天下だったな、とかじゃあねェから!」
入江は絵里の○ブリの台詞に、これまたジブ○の台詞で言い返すも。
噛み合う訳もなく。
「こ、この、俺、結構、ドヤ顔で決めちゃってーー…」
「『はっずかすィ~~!』」
「‼ うっせェ~~よッ! つぅか、どうにかしろよ!」
入江の腹の中が熱くなると。
「ッチ! んん??」
次に、頭痛がした。
「った! ぃってェ~~‼」
同時に何かが浮かんだ。
「こ、これはーー…」
ポン。
「え?」
入江の肩に誰かの手が置かれたように重くなる。
「『それを唱えて』」
絵里が居た。
「絵里、ちゃん?? なのか…???」
「『え? うん。そうだよ、可愛くない出口ちゃん』」
心強さ。
何でも出来そうな錯覚にも、陥る。
「ハッタリで、あのドヤ顔は、傑作じゃな」
クスクス、と妾が嘲笑う。
それに入江も頬を紅潮させる。
「その記憶も、全部、ぶっとばしてやんよ!」
入江が額に指をやる。
そして離し、それを前に、雨粒を払うように飛ばすとーー
「っす、すっげェ~~じゃなァ~~~い?」
黄金色の文字が勢いよく溢れた。
その光景を目の当たりにした、妾の表情が、強張っていく。
あの無表情に近かった、人形のものではなくなっている。
「どんな魔法が起こるんだよ」
わかてか、わかてか。
「てか。知ってけっど、な」
俊敏な動きで、矢を宙に放った。
シュン! シュン‼
バッシュ‼‼
ドドドンッッ‼
大輪の花火が、花ひらいた。
「っぐ! ど、どうして、お主がこの魔術式をッッ??」
妾の足が、砂に取られ、腰が落ちてしまう。
どっーーーっしん。
「っぐ!」
チャキ!
「はい。お前さんの負け――~~」
弓を向ける。
「っぐぬぬ!」
「さ。聞かせてもらおうかなっと」
「狙い、をな」
そのとき。
きゅいーーー~~ん!
「?? な゛!?」
レインボーのパネルのアイテムが発動した。
「‼ 今日のところは、ここまでじゃ! 覚えておれよ‼」
捨て台詞を吐き、妾が、丸いシャボン玉の中へと姿を消した。
そして、そのシャボン玉も破裂した。
「な、んでだ?」
まるで、彼女のために。
「何でだよ‼」
入江が、そう叫ぶ。
「『だって、あれはーーのためのものだからね』」
「は」
入江は耳を疑った。
「じょ、冗談は止めろよな」
少し、声が上擦ってしまう。
「そ、それじゃあ、俺は…俺は、何なんだよ」
「『多分。その資格が、今はないんだよ』」
「ど、どうしてだよ‼」
もしも、そうならーーこの先。
「もう。あれには…頼れない??」
誰かが、死ぬ結果になる。
パーティが全滅の恐れも出て来た。
「ん、な…馬鹿なこと、が…起こるんかよ…」
入江は弓を砂に立てた。
ガクガクに震えた膝が、カクン、と落ちる。
ドサ!
「っは、はは、は。マヂ、かァーー~~!」
そして、寝っ転がると、大の字になった。




