#57 俺の知らないところで廻る世界
どうにもならないじゃないか。
どうにかしろよ。
◆
寝っ転がった。
背中が焼ける。
「あ゛づい゛!」
入江の額にも汗が滲む。
「『馬鹿だね、可愛くない出口ちゃん』」
「うっせェ」
仰ぐ。天が遠い。
手を伸ばしても、決してーー届かない。
そんな深い天だった。
「どうーすっべ…これ」
あの便利 道具が使えない。
「おい。絵里ちゃん! どうにかしろよ」
「『どうにかって。どうして、欲しいのかな??』」
「いいから、とっととどうにかしろよ」
入江は大きくため息を漏らす。
ダラダラーー…。
「元は、アンタが連れてきた世界だろうが!」
「『頭に浮かばせたのは、可愛くない出口ちゃん』」
「頭にくんな。アンタ」
弓を自身の額にふっつける。
矢も、だ。
「『何? 脅し?』」
しないなら、お前ごとーー死ぬ。
そんな覚悟。
「脅しィー~~?? ははは! 冗談!」
バッシュ!
入江はそのまま矢を放った。
その矢は、入江の脳天を射貫く。
しかし。
矢は少し反れてしまい、苦痛が残った。
『さ、唱えて』
走馬灯なのか。
そんな絵里の言葉が浮かぶ。
そういや、んなこと言ってたな、と。
結局は、唱えなかった。
ならー死ぬ前に。
パカーー…。
「い、かなるものも、我に従え。我はーー全能なる神の僕にして…」
かっは…ッ。
徐々に、意識がフワフワと浮き出す。
「『さ。残りをーー唱えなさい』」
「っぜ、たいなる…ぅ…っか。りゅう、ど…な、りー…」
ガクン。
◆
「んー…んん??」
熱くない。
むしろ、冷房が効きすぎていて寒い。
パチン。
「ったくよー~~俺あ、お前のタクシーなのか?! ッえ!」
ブツブツという、会いたかった彼が、ぶ~~垂れている。
そう。
「--…江頭、主任…??」
「あ゛?? んだよ、そんな顔してよォ!?」
勢いよく、入江は江頭に抱きついた。
「‼ の゛あ゛!? っちょ!」
バッターーーン‼
そのまま床の上に倒れ込んでしまう。
入江が、江頭を押し倒す恰好だ。
「何? 寂しかったのか? 出口ちゃんってば」
「!? 違よ!」
むくりと入江が、起き上がった。
「手前の嫁に襲われたんだけど!? 本当に《嫉妬の平子》だわ‼」
江頭の顔が青ざめる。
「っそ、そいつぁー~~すまんかったな」
そして、目を逸らす。
「おい! 帰って来いよ‼」
『それは、無理なのよ。可愛くない出口ちゃん』
運転席から、女の声がする。
絵里だ。
『ただ。その罰も、もうじき終わるよ』
「おい。その話はやめろや! エリッ!」
言いかける絵里を、江頭が静止させた。
この場所は《連鎖の揺り籠》。
そしてここは《【神魂特急】》の中。
「代償はもちろん、貰うぜ」
ごきゅりー…。
「--今度、ゆっくりと、な!」
「江頭、主任」
「そんな顔しなくたって、また会いに来てやんよ」
「…おう」
「俺の大好きな出口ちゃん」
ちゅ。
額に触れる唇。
グラリー…意識がぼやけ始める。
また、お別れ。
「じゃあ、頼まァー~~エリ!」
『うん』
ブッツン!




