#55 まだ、諦めない!
踏みとどまった接客。
◆
入江は矢を放つ瞬間、相手が妾であることもあり、躊躇してしまった。
そして、目分量を誤った。
あ、ヤベェー…!
バシュシュ‼
「虚けめが」
妾は、その入江のーー動揺に嘲笑する。
「敵の前にして、それでは足元が掬われてしまうぞ!」
妾が声を上げると、砂が盛り上がり、巨大な腕が出て来た。
「!? ええええ、絵里、さァ~~ん??」
入江の声が強張る。
そして、絵里に求めた。
知恵、を。
「このままじゃあ! あの腕にヤられちまうぞ!?」
弓を持ち、入江は腕から逃げた。
砂に足をとられながら。
「ぐッ! っくそったれがッッーー砂が、っくそ!」
しかし、そんな入江に腕は容赦なく迫る。
「のあ゛!」
入江は、ついに砂の上に倒れてしまうも、
「! くっそ‼ こー~~なりゃあァ‼」
弓を使い、砂の上に立ち上がり、そう叫んだ。
「『可愛くない出口ちゃん。ポケットの種を蒔いて』」
優しく絵里が入江に囁く。
「! お、おうッッ‼」
入江も、急いでポケットを漁る。
「悪あがきじゃな」
妾が大きく口を開けると、ついに巨大な砂の顔が現れた。
「!? 次から次に‼ 厄介な常連客だなァ~~~~ッッ‼」
急いで入江も種を言われるがままーー撒いた。
「これでいいんか??」
入江も確かめる。
「『上出来』」
キュンー…ん?
(こいつの声が、アイツの声に聞こえちまうな)
顔を赤くしたり、青くしたりと忙しく百面相する入江を、無視するかのように、絵里は言い続ける。
「『さぁ、お出でなさい!』」
パラー…パラー…。
「え」
入江がその振って来るものに手を出す。
水滴が、ついた。
雨だ。
「! 雨じゃ、と?」
妾が、上を見上げると巨大な顔が崩れ落ちた。
ただ、腕は残った。
「行くのじゃ! あの者を捻り潰してしまえ‼」
妾は穏やかじゃないことを言った。
「に、握りつ、ぶす…?? っは! 本当に、タチの悪ィ、常連客だなァーー~~ッッ‼」
そうボヤく。
ボコ、ボコ…こここ。
「しっかァー~~し! ここでヤラれるわけにゃあいかないんだわ。悪ィな、お嬢ちゃん」
ボコココ‼
種を蒔いた前から《【標識調】》が生えた。
「俺様は、守護者なんでね‼ アイツらのッッ」
その葉は、全てーーレインボー色。
そう、アイテムプレートだ。
「だから、手前にだって手は抜かねェよ? そりゃあ、最初に手を出したんはお前なんだから、仕方ねェ~~わなァーー~~?」
ボチ!
◆
「あれーここ、どこ…?」
浦飯が目を覚ました。
真っ暗な空間。
目の前には、豪華なご馳走が並んでいる。
『目が覚めましたか。浦飯さん』
「あ、れれ?? あたし、確か…入江ちゃんたちと、何か、ジャングルみたいなところに行ってて…そ、それでーー…」
『そうです。貴女はそこで離脱したのです』
ワナワナーー…。
ボロ、ボロロ……。
「あ、あたし、死んだの? 死んじゃったの??」
そう言葉を詰まらせながら、涙を手首で拭く。
「ぁ」
ぐうううぅぅぅーー…。
美味しそうなご馳走の匂いにお腹も鳴る。
『安心して下さい。死んでなんかいませんよ。寸止めで奪い返したので』
バッ! 浦飯が顔を上げた。
「ほ、本当に?」
浦飯の後ろから、腕が伸び、抱えられる。
『ええ。それが証拠に、腹が鳴っている。でしょう?』
コク! コク‼
「あ、あ゛な゛だ、だれ゛??」
『私はーー』




