表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/88

#52 前進する、何か

 寄生される。厄介なことに。


 ◆


「絵里ちゃんの、声が聞こえな、い…?」

 小林が耳に手を抑えた。

 音は聞こえる。それはいつも通りだ。


 だが。


「何か、耳の奥にさ~~あの女の声すんだけどォ~~最悪だ」

 入江が目を細めた。

「僕の絵里ちゃん」

「へ?」

「それはー」


「っは?!」


 ドサー…。

 小林が入江を押し倒した。


「それは僕の絵里ちゃんなんだ! 返せよ‼ 僕の、僕の絵里ちゃんを‼」

 襟足を小林に鷲掴みにされる。

 ボロボローー…。


 あの小林が啼いた。


「っつ、め、た…っ…」

 その顔を下から見上げる。


 この泣き顔は、身に覚えがあるー気がした。


「『りっちゃん。泣くなんて男らしくないじゃない』」

 入江の意識とは別に、口が、勝手に動かされる。

 思わず入江も口を抑える。


 しかい、勝手に動く。

 舌が動く。


 ったっくもー~~、勘弁しろよ…。


 諦めた入江が口から手をどかした。


「『もう、りっちゃんには私は必要ないよ』」

「必要かどうかは、僕に相談なしに決められたには合点がいかない!」

「『今は、出口ちゃんが私が必要なのよ。ねぇ、私の可愛い弟ちゃん』」

「絵里ちゃ…姉さんーー…」


 入江は蚊帳の外で、このやり取りに心動かないが。

 なのに、横の五十嵐は泣いている。


「ピュアなおっさんだなァ~~」


 入江が苦笑する。

「小林さん、喉、苦しいんだけど」

「! ああ、悪かった」

 っぱ! 小林も手を離した。


 ◆


「ったく! いい加減にするべさ!」

 メジロはご立腹だった。

「少しは真面目に働くべ! 給料泥棒たぁ、おのことを言うべ!」

「ふぅ」


 現場復帰するも、メジロが目を鋭く入江を監視している。


「あのさぁ~~俺だって、俺なりの理由っつ~~のがあってねェ~~??」

 入江の言い返しに、

「知るか! アバズレ‼」

 大きく言い返されてしまう。


「あああ、アバズレって! おおおお、俺が誰とニャンニャンしてるって言うんだよォ~~!? 俺ァ~~純潔バージンだっつ~~の‼」

「ニャンニャン? 猫がどうしたべさ」


 むぅ。


「お前は愛されているのに、誰の手を取る気もねぇべさ」

「はァ~~??」

「きっと、それが…原因で、お前は破滅すっべさ」

 メジロが入江の鼻先に指を置く。


 呪うかのように。


「あ、あのよォ~~メジロォ~~? 今さら、なんですけどォ~~」

「あ゛? あんだべさ」

「ひょっとしてェ~~俺のこと、愛しちゃってる??」


 っぼ!


「だだだ、誰がお前なんかに! 自惚れるでねぇべ‼ うすらとんかちが‼」

 メジロが顔を手で仰ぐ。

「『メジロちゃんが好きなのは、りっちゃんだよ。出口ちゃん』」

「!?」


 急に喋った絵里に、メジロは身体を跳ねさせ後ろにやり、拳を握り攻撃体勢をとる。彼女は好戦的な種族だ。

 挑発行為は敵と見なされる。


「『初めましてて、メジロちゃん。私はりっちゃんの姉の絵里ちゃんです』」

「あ、ね??」

 入江の口から吐かれる女性の声。

 入江のものではないのは明らかだ。


 しかし、納得はいかない。

 いかない、が。


「…あっそ。その給料泥棒を働かせるべさ、絵里ちゃん」


 害がないなら放っておく。

「『ええ、そうするわ』」

「きゅ、給料泥棒じゃあねェし?! っつー~~か! メジロ、お前ーー」

 入江の顔がいやらしく微笑む。


 にまにま。


「! うっさいべさ! とと、とっとと入れ替えすっべさ! この給料泥棒‼」


 抑えた拳が入江放たれ、顎にアッパーが入る。

 そして、入江の身体が宙に舞うのだった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ