#51 絵里ちゃんの引っ越し
対峙せよ。
◆
「あの阿呆の目を覚まさてやろうじゃんか」
入江が舌なめずりをする。
『貴方たちが闘う理由なんて、どこにもないじゃあないではありませんか』
ボロボロになりながら起き上がろうとする彼に、
「いいから、そこで高みの見物でもしてろってんだよ!」
『し、しかし…』
「んでよォ。俺が勝ったら、手前の正体を教えろってんだ‼」
ブワアァーー~~~~~~~~~~~ッッ!
入江が上がっていく。
「マンガ見てェだな! こんなこたァ出来るなんざよォ~~!」
「うん。本当に、ね」
「小林~~手前~~ッッ!」
入江が牙を剥く。
「覚悟しやがれってんだ‼」
バシュ! シュボ、シュボー…‼
「本当に、感情で動く子だね」
絵里が苦笑する。
「そんなんじゃ、この先りっちゃんと居られないよ? 早死にしちゃうんじゃないかなぁ~~」
「?? りっちゃん?? りっちゃーー!? ぁ゛」
入江の攻撃が止まった。
何かに気付いた。
それは。
「手前は、誰だーー…??」
「あはは~~ようやく、私に気づいたの? 全く、馬鹿だねぇ~~」
「小林、なのか??」
「うん。まぁね~~」
胸がざわつく。
何だ、この感覚は。
「さ。帰ろう」
にこやかに、絵里が手を伸ばす。
「嫌だね」
「…何で、かな??」
「手前が胡散臭せェからだよ‼」
顔の正面から、矢を放った。
それは直撃をした、はずだったのに。
「まぁったく! 聞き分けない馬鹿だね‼」
な、ん、だァ~~??
入江は頭が混乱する。
「おい! こいつは貰っていく! また、目の前に現れたら、そのときは容赦なくーーお前を抹殺する!」
ガバ!
「ぅ゛お゛!? おい、っちょい゛‼」
絵里が入江に抱きつき、肩に担いだ。
「うっさい。この馬鹿、が」
ジタバタする入江の首を叩き、意識を失わせた。
◆
パチ!
「うおーー…っと。あ゛??」
また、見慣れた天井がある。
「おい。ったく、世話をーー…」
小林の顔を見た瞬間、入江は殴り飛ばしていた。
聞くよりも先に、拳が飛んでしまった。
「!? 出口! 落ち着けって!?」
慌てて五十嵐が入江の身体に巻きつく。
「だって、だってーーあの阿呆、はッッ‼」
「そいつは小林さんじゃない、小林さんなんだってっつ~~の!」
「っはァ??」
入江が不可解な顔をする。
そして、起き上がる小林を見た。
「『…阿呆は、どっちなんだろうなぁ~~』」
小林の口から絵里の声が吐かれる。
「『再教育をしようか?』」
「手前に教育された覚えなんざねェんだよ!」
五十嵐に抑えられたまま、威勢よく入江も吐く。
「『ったく。恩を仇で返す、こんな阿呆のどこがいいんだが!』」
ちゅ。
絵里が口づけをする。
すると、小林の身体がよろけ尻から床に落ちてしまう。
「え、絵里ちゃ、ん??」
小林が目を丸くさせた。
そう。
小林の中の絵里ちゃんが消えた。
いや、宿主を変えたのだ。
入江出口に。




