#49 小林の中の絵里ちゃん ② 激突
滑稽だ。
◆
「助けて下さい! 絵里ちゃん‼」
そんな小林の叫びに、五十嵐の目をパチパチ! させた
その《絵里ちゃん》の声は、小林にしか聞こえない。
小林だけのーー女性。
『本当に、妬けちゃうね』
鼓膜の奥の絵里ちゃんが微笑する。
『じゃあ。りっちゃん、入江ちゃんにキスしてよ』
ピタ。
「ぇ…ッ」
『じゃないと、私ーーあの子の中に行けないもの』
「?! っづ??」
ボワーー…‼
小林の顔が紅潮した。
「な、何?? 小林さん??」
状況が読み込めない五十嵐が、怪訝な顔を小林へと向けた。
「あ、後。君にもーこいつにも…」
「へ??」
「僕の秘密を教えてあげましょう!」
ぶ、っちゅう~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~‼
「!?」
小林が入江の唇に舌を這わせ、そのまま口腔へと挿入た。
全てが全て、絵里ちゃんの指示だった。
「こ、小林さん??」
五十嵐も唖然とする。
◆
グネグネ、していて、足元がふらつく。
「しっかし。まぁ、まぁ」
彼女が地面に足を着けると、そこからは緑が茂った。
グネグネしていた光景が落ち着きを取り戻した。
「はて。ここの主殿は、どこにいるのかな?」
彼女の名前はーー絵里。
顔は小林と瓜二つ。ただ表情だけが違う。
絵里は感情を押し殺す真似はしない。
その全てをさらけ出す。
鉄砲玉のような、危うくも、惹かれるーーそんな存在。
それは小林も同じだが、彼はどちらかと言えば、安心感とその存在感に、みんなが惹かれる。
そんな、存在だった。
しかし、その彼に反発しかしないーー彼、入江出口が現れた。
小林は不快感を。
絵里は興味心を。
それぞれ持った。
「んふふふ~やぁっと、会えるんだぁなぁ~~」
バシュ!
「んン゛??」
バシュ! バシュ‼
「あ゛?!」
攻撃を受けた。
絵里の頬に、放たれた矢がかすり傷となり、血が滴った。
攻撃した主を探すと。
「…お前。何、してんの?? こぉんなところでよぉ~~??」
その存在を確認すると、絵里の目が鋭くなり、言葉使いが男のものとなった。
威嚇。
威嚇。
威嚇。
『っち! それはこちらの台詞ですよ』
兎の頭を被った、彼。
その彼が、入江の中に居た。
『そっくりそのままーーお返ししましょうか‼』
大きなバズーカ砲が向けられた。
「ぉー…っと!」
絵里は大きく身体を前かがみにすると、バッタのように跳ね上がった。
それにより攻撃も大きく反れてしまう。
『っち!』
「いー~~からよぉ~~入江ちゃん、返してよ」
『ダメです』
「私のりっちゃんが泣いているんだよぉ~~??」
『知ったことではありません』
平行線。一致しない会話。
「じゃあ。勝負しようじゃあないかぁ~~彼を賭けて」
『いいでしょう。半身の貴女に、私は負けない』
入江の預かり知れないところで、彼を賭けた勝負が始まってしまう。
彼はと言えば。
空間がくっついたままの映画館の座席に座ってしまっていた。
戻らせる前にーー捕まってしまった。
悪夢に。
繰り返し見せられる、何度も、何度も、それに苦しませられる。
すぅー…
荒かった息が収まる。
同時にーー入江の目が開いた。




