#48 小林の中の絵里ちゃん ①
皆が傍観者。
◆
内容が難しいのか、何なのか、頭に何も入らない。
会話も、登場人物も。
おかしい。
普段、そんなことはない。
(何だァー??)
入江は首を傾げた。
『どうかしましたか? 入江サン』
「別に」
素っ気なく返す。
『興味が湧かないようですね』
「ああ」
どうしても内容が頭に入らない。
入らない以上、どうでもいい。
『仕方ないですねぇー~~とても重要な記憶だと言うのに』
大きく彼もため息を漏らした。
『帰りましょうか。そして、色んな形でお見せするとしましょう』
「? うんにゃ、もういいし」
『とても、とても、とても、彼にも、貴方にも大切な記憶なのですから』
淡々と言う。
◆
パチ!
「あ゛??」
気がつけば柵によっかかる形で屋上に座っていた。
「ここぁー~~おく、じょ…か」
バァン!
「居た!? 入江ー~~ッッ‼」
険しい顔のメジロが走って来る。
そして、
「お前、なして、泣いてるべ」
怪訝な顔をした。
「ぇ、泣いて、る?? んな馬鹿な…ぁ゛??」
目もとに指をやると、水の感触があった。
涙、だ。
悲しいことなんか何もないというのに。
「なみ、だ?」
「?? なしたべさ?」
少し、心配そうにメジロが入江に顔を寄せた。
「ん。大丈夫、だいじーー…」
ガクンー…!
「!? い、入江ー…?? っちょ!」
メジロは声を荒げた。
◆
「全く、本当にこいつは」
小林がボヤく。
「いやいや。出口も、結構頑張って、気張って、疲れたんですって」
それに五十嵐が入江を擁護する。
ここは第四休憩室。
入江が唸る。
「…だ、め…だ!そ、そんな、こたァ…だ、めー…」
額から冷えピタが落ち、それを小林がまた引っつける。
「何の、夢視てんだか」
「ま。恐ろしい夢でしょうね」
入江の表情が真っ青になった。
「‼ お、おい…?? 出口??」
五十嵐が慌てた。
真っ青だからだ。
「…どんな夢にしても、おかしいってもんじゃない」
『聞いて、りっちゃん』
耳の奥で絵里が小林を呼ぶ。
「絵里、ちゃん」
「?? え、小林さん??」
『手を貸してあげるよ』
それは悪魔の囁きか、それともーー小林の気持ちを知っての行動だったのか。
しかし、それは危険な賭けのようにも思えた。
「お願いします‼ 絵里ちゃんッッ」
そう小林が、懇願した。
「こ、小林さ、ん???」
五十嵐は困惑しきりだった。




