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#47 終わらない映画鑑賞

 緩やかに、溶け込んでいく。


 その時代に、その時間にーーあらゆる記憶の断片の一部として。


 ◆


 おかしなことに、すでにメジロは記憶に組み込まれていた。

 その証拠に。


「メジロっち! 今日来るの早くねぇ~~??」


 すれ違うスタッフに、何かかんか言われた。

「何か、恐ろしい力が働いているようだ」

 小林の眉間がしわを作る。

「気持ち悪い」

 そう言い捨てた。

 表情も曇る。


 その空気に、

「でも。なるようになってんじゃん」

 入江がそう応えた。

「たまたまだ。そんなこと」

 荒れる小林に、

「そんなに怪訝な顔したらー~~出口に、もっと嫌われてちゃうぜ~~??」

 五十嵐が小林の肩に腕を回し、意地悪く、笑った。


 ◆


「ったく。なんでおらが、おなんかのお目つけなんて、しなきゃなんないべさ!」そうメジロがぼやいた。

 ただ仕事面では優秀だった。

 まるで、以前からこの仕事をしていたかのように。

 メジロ、曰く。


『身体が勝手に、こうーー動く感じなんだべ』


 テキパキ、テキパキ!


(あ。なんか楽だし…サボってくっかなァ)

 へら。

「あ。そうだべ! お前ー…ん゛、入江? あ゛、入江ぇ~~??」


 メジロが、何かを振ろうとして振り返ったときには、もう入江の姿はなかった。

 

 ◆


 銀河エンタテインメントの建物の屋上。

 そこが入江の、恰好のサボり場所だ。


 ぷっはー~~!


「あ゛~~今日は何か、色々とくたびれた…」

 すぅーーはァ~~…!

「全く」

 そして、足元に視線を向けた瞬間。


 建物のコンクリートに映し出された。

 それはーー記憶の断片のようなもの。


「…あ゛…?」


 あの映画館だ。


 座席に彼がいる。

 すくっと立ち上がった。


 くるん!


「‼」


『さぁ。こちらへー』


 大きな手のひらが入江を掴んだ。


「! んだよッッ‼ こ、このッ‼」

 ポロリー…入江が咥えていた煙草が落っこちた。


 そこへ。


「ごら゛ぁ~~! 入江ぇ~~‼」

 メジロが怒りの表情でやって来た。

 しかし。


「…い、ない…??」


 屋上には何もなかった。

 あるのは広がる青空に。


 落っこちた、火のついた煙草だけだった。


 ◆


 座席に真っ逆さま。

「もう少し、客を、客らしく扱えよなァー~~…ったくよォ~~!」

 入江も体勢を整える。

『客ではありませんし』

「じゃあ、呼ぶんじゃあねェーっつ~~の!」

『そう、貴方は客なんかじゃない』

「分かったっつ~~の! しつけ~~のっ」


『大事な出演者、です』


 その言葉に入江の顔が、表情が強張る。

「しゅ、つ、ェん、しゃ…??」

 入江の声が詰まる。


 しかし。


「ははは! 上等だよ! かかって来いやァ~~っ!」


 すぐに入江は強気に微笑んだ。

『本当に貴方はーー底が計り知れない』

 彼が楽しそうに言う。

「あっそ!」


 そして、またスクリーンを見るべき座席に腰かけた。

 

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