#46 相棒(パートナー)
人生は人とのつながり合いで出来ている。
相方が馬鹿でない限りーー道は平坦なものだろう。
ただ、馬鹿であればーー人生はジェットコースター。
そのものになる。
◆
入江は真っ暗な映画館の中、浦飯と睨み合っていた。
横にいる浦飯は、入江の知る浦飯ではない。
「やだなぁ。入江ちゃんってば~~」
浦飯が笑うーーそして。
「どうして分かるのかな~~」
「…匂いだ」
「? 匂いぃ~~??」
「ああ。後、空気かな? ああ、多分、空気だ」
「空気ぃ~~??」
入江は足を組み敷き、前を見据えた。
「浦飯さんは人の話はきちんと向かい合うし、何にしても、言葉を遮らねェの!」
「ふぅ~~ん」
「俺を言いくるめて、手前は何がしてェんだよ」
「別に。そんなぁ~~」
そう言うと浦飯はどこからか兎の被り物を取り出して頭に被った。
彼、だ。
落下した後に会った、あの男の子だ。
『私の望みは…全てを一つに戻すこと』
入江は目だけを彼に向けた。
「言ってる意味がよく俺にゃあ分かんねェし」
最強の魔女、エリオット。
「これよォー~~何時間あんだよ」
◆
「あ。目が覚めたか」
また、見慣れた天井がある。
「あ? ここぁ~~??」
か細い声が入江から漏れる。
「「第四休憩室だ」」
五十嵐と小林の声が交わった。
「えっ……っと。俺ァ、…っと。思い、出せねェ……っつ!」
入江が頭を抱えた。
と。
ふよ。
「あ゛?? あんだァ?? こりゃあ???」
肘が何かに当たり、入江が見上げた。
「まぁったく。何なんだべ、お前は」
「の゛あ゛!?」
思わず入江も飛び起きた。
「めめめ、メジロ???」
どうして現実のこの世界に居るのか。
いや、それ以前に、獣人でもなくなっている。
完全なる人間の姿。
「あ。ま、いっか」
ばっふーーーーん!
入江がメジロの太ももに頭を置いた。
「…本当にお前は、何なんだべ」
メジロは軽蔑の眼差しを向けた。
「いいじゃんか~~膝枕くらー…!?」
勢いよく入江が血相を変えて起き上がった。
「ううう、浦飯! と、ト、トヲルはッッ??」
五十嵐と小林は顔を背けた。
「居ねぇべ。そんな人間」
メジロが素っ気なく答える。
「そんかし。おらがーーここに居る。お前のせいで」
「…っはァ??」
入江がメジロと向かい合う。
「おらは月代メジロ。十七歳でコインスタッフで、卒業と同時に従業員」
「はァ??」
「そう、おらの記憶に書き込まれているべさ。そのうち、今の…この記憶も、あっちの記憶も、色んな違和感もなくなっていくんだべな」
泣きそうなメジロに小林が声をかけた。
「月代さん」
メジロも躊躇しつつ、「はい」と応えた。
「君はその馬鹿の相棒になったわけですから、きちんと手綱を持っておいて下さいよ?」
小林はしかめっ面で言い放った。
ビク!
「この馬鹿の…手綱を、おらが持つ??」
チラー…はぁ~~。
「ハゲハゲ! いい加減に髪から離れろや‼」




