#44 メジロが押す○○ボタン
行くかい? 来るかい?
それは君が決めることなんじゃないかい?
◆
《標識調》が生えた。
そのことに慣れていた三人を他所に、メジロと伍朗は驚き、慄いていた。
「なっんだべ! その植物見てぇなもんわ‼」
メジロが後ろに、引っ込んだ。
だが、逆に伍朗は、ふんふんと鼻を慣らして、その標識調に触れた。
ぺったかぺったか!
「うん。大丈夫だべさ‼ メジロ! 安心すんべさ、これぁ、ただの植物だべ!」
「ふゥ~~ん。あんたさァ~~見かけによらず男らしんだァ~~」
そんな果敢な伍朗に、入江が声をかけると、伍朗の腕を揉む。
「太いなァ! すっげェ~~有藤君みたいにもりっもり!」
有藤鷹はメダルスタッフで農家の息子だ。真っ黒に日焼けをした、入江の同期。家族ぐるみの付き合いでもある。
「っふ! はふ! も、よすべさ!」
伍朗がよろつく。
「あ゛? ほいほい」
入江も手を離す。
「さて、と? えっと…」
赤色。
緑色。
黒色。
「「「黒??‼」」」
入江、そして五十嵐と小林が声を揃えた。
出ざるを得ない、そんな色ーー黒。
「くくく、黒、押そうっかなァ~~」
入江が頬を紅潮させている。
「ダメに決まってんだろうが! あんぽんたん!」
後ろから五十嵐が羽交い絞めにする。
「! い~~じゃんかァ! 減るもんじゃあねェじゃんかよ!?」
ジタバタ! と入江の足がバタつく。
「減るもんじゃないって、本当に??」
ちゅううううううううううううう。
「むぐっ! ァ、ンタな゛ァ゛っヅ‼」
小林が隙をついて入江に口づけをする。
「あ。小林さん! ずっこいっっ」
五十嵐が腕を離したこと幸いと、
「キモイんだよ! このネクラ野郎っっ‼」
バッコーーーーン! と小林を入江は殴り飛ばした。
しかし、小林はそれを寸でで交わした。
「!?」それに入江も驚くも、ちっ! とだけ漏らした。
◆
「さて、と。じゃあ」
入江はむくれつつ、緑のボタンに指を置いた。
「…黒、押したい…押したい、押したい…」
呪文のように唱えるも。
「「うっさい」」
五十嵐と小林が叱りつける。
「っち!」
そして、押しかけた瞬間--
「ごちゃごちゃ、うっさいべさ」
赤色。
緑色。
⇒黒色。
ポチン。
「押せばいいべさ。こんなーたかがボタンだべ」
短絡的にメジロが押してしまう。
「「「………‼‼‼」」」
三人の悲喜こもごもの表情に。
「きんもいべな」
メジロの表情が険しいものになった。
それと、同時にーー《標識調》が枯れていく。
いつもと同じなのに、どこか堪らなく、恐ろしい。
「愉快だな。どうなるやら!」
入江がメジロの背中に手を回した。
「! な、何だべさっ」
「ひひひ! 手前ー俺の相棒にしてやんよ」
「…何なんだべ、それ」
「いいから! いいからー~~! っな?? よろしくな相棒っっ!」
半ば、無理やりにメジロの腕を上げさせ、手のひらを合わせ叩いた。
そんな微笑ましい光景とは、別に。
◆
「! あ、あのボタンを押したのか?? あいつらっっ‼」
クラレントが取り乱した。
そして、クラリスの身体を後方へと揺らす。
「ゆ、由々しきことでしてよ! クラリス‼」
クラリスも、その光景にくぎつけとなっていた。
口許を吊り上げる。
「本当に、腹が立つ連中だよ…ッッ!」
ただ、その台詞の感情とは別に、表情は微笑んでいる。




